■求積の多様性を考える(その13)
(その8)を補足しておきたい.
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昔なつかしい「ベクトル」を思い出して頂き,「ベクトルの外積」の大きさ,すなわち,2つの2次元ベクトル
a↑=(x1,y1)
b↑=(x2,y2)
が作る平行四辺形の面積について考えてみることにしましょう.
|a↑|=a,|b↑|=b
とすれば,平行四辺形の面積は,
S=absinθ
ですから,
S^2=a^2b^2(1−cos^2θ)
=|a↑|^2|b↑|^2−(a↑・b↑)^2
=|a↑・a↑ a↑・b↑|
|b↑・a↑ b↑・b↑|
で与えられます.内積の行列式で定義される行列式をグラムの行列式(グラミアン)といいます.平行四辺形の面積はグラミアンの平方根に等しくなるというわけです.これを座標を使って表せば,
S^2=|x1 x2|^2
|y1 y2|
のように展開されます.
3次元ベクトル
a↑=(x1,y1,z1)
b↑=(x2,y2,z2)
のときは,
S^2=|a↑|^2|b↑|^2−(a↑・b↑)^2
=|y1 y2|^2+|z1 z2|^2+|x1 x2|^2
|z1 z2| |x1 x2| |y1 y2|
これは3次元ベクトル
(y1z2−z1y2,z1x2−z2y1,x1y2−y1x2)
の長さの形をしています.
これは平行六面体の体積
|a↑・a↑ a↑・b↑ a↑・c↑| |x1 y1 z1|^2
V^2=|b↑・a↑ b↑・b↑ b↑・c↑|=|x2 y2 z2|
|c↑・a↑ c↑・b↑ c↑・c↑| |x3 y3 z3|
ではなく,平行四辺形の面積であることを注意しておきます.
a↑=(x1,y1,z1)
b↑=(x2,y2,z2)
の外積は,3次元ベクトル
(y1z2−z1y2,z1x2−z2y1,x1y2−y1x2)
で与えられます.すなわち,外積の大きさ=平行四辺形の面積なのです.
少し見ただけではわかりにくい表示で,憶えるのも大変そうですが,行列式を使うと
|e1↑ e2↑ e3↑|
c↑=a↑×b↑=|x1 y1 z1 |
|x2 y2 z2 |
上の行から,単位ベクトル,a↑の成分,b↑の成分の順に並ぶというわかりやすい形に整理できます.
同様に,4次元のときは
a↑=(x1,y1,z1,w1)
b↑=(x2,y2,z2,w2)
S^2=|a↑|^2|b↑|^2−(a↑・b↑)^2
=|y1 y2|^2+|z1 z2|^2+|x1 x2|^2
|z1 z2| |x1 x2| |y1 y2|
+|x1 x2|^2+|y1 y2|^2+|z1 z2|^2
|w1 w2| |w1 w2| |w1 w2|
これは6次元ベクトルの長さの形をしていることがわかります.
一般のn次元の空間では
a↑=(u1,・・・,un)
b↑=(v1,・・・,vn)
に対し,
S^2=|a↑|^2|b↑|^2−(a↑・b↑)^2
=Σ(ujvk−ukvj)^2
ただし,Σはj<kとなるnC2=n(n−1)/2組に対して和をとるものとします.
これは,n(n−1)/2次元ベクトルの長さの形をしているのですが,空間の次元が3のときだけ,運よく3次元ベクトルが得られていることがおわかり頂けたしょうか? この事実は,外積が3次元ベクトルでしか定義できないことを示しています.
ベクトルの外積は3次元特有のもので,2次元でも4次元でもだめなのですが,ほとんどの物理現象は3次元空間で生じますから,これでも汎用性は高いというわけです.
また,このことは,ベクトルの内積が一般のn次元空間でも
a↑・b↑=Σukvk
と表されるのと対照的です.もっとも4次元以上では2つのベクトルa↑,b↑の張る平面に直交する方向は一義ではなくなるので,話がおかしくなってしまうのですが・・・.
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