■求積の多様性を考える(その9)
[Q]空間充填18面体の体積を求めよ.
角錐分解公式は
vol(P)=ΣNjhj/n・Vn-1(j)
で与えられる.角錐分解によって計算してみよう.
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2つのベクトルa↑,b↑を基底とする平行体(平行四辺形)の面積は,外積は
a↑×b↑
3つのベクトルa↑,b↑,c↑を基底とする平行体(平行六面体)の体積は,スカラー三重積
(a↑×b↑)・c↑
すなわち,外積a↑×b↑とベクトルc↑の内積で与えられます.
|a↑|=a,|b↑|=bとすれば,平行四辺形の面積は,
S=absinθ
ですから,
S^2=a^2b^2(1−cos^2θ)
=|a↑|^2|b↑|^2−(a↑・b↑)^2
=|a↑・a↑ a↑・b↑|
|b↑・a↑ b↑・b↑|
同様に,平行六面体の体積は
V^2=|a↑・a↑ a↑・b↑ a↑・c↑|
|b↑・a↑ b↑・b↑ b↑・c↑|
|c↑・a↑ c↑・b↑ c↑・c↑|
で与えられます.
これらのように,内積の行列式で定義される行列式をグラムの行列式(グラミアン)といいます.平行体の面積・体積はグラミアンの平方根に等しくなるというわけです.
また,座標を使って表せば,n+1個の点の座標に(1,1,1,・・・,1)を加えて作られる(n+1)次の行列式の絶対値になります.
|S|=|1 x1 y1| |V|=|1 x1 y1 z1|
|1 x2 y2| |1 x2 y2 z2|
|1 x3 y3| |1 x3 y3 z3|
|1 x4 y4 z4|
原点が含まれるときは,
|S|=|x1 y1| |V|=|x1 y1 z1|
|x2 y2| |x2 y2 z2|
|x3 y3 z3|
のように展開されます.
なお,これらはそれぞれn次元単体の体積のn!倍になりますから,三角形面積,四面体の体積は,
S’=S/2
V’=V/6
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3次元空間内の3点P(x0,y0,z0),Q(x1,y1,z1),R(x2,y2,z2)が与えられた場合,
a=(x1−x0,y1−y0,z1−z0)
b=(x2−x0,y2−y0,z2−z0)
S^2=|a↑|^2|b↑|^2−(a↑・b↑)^2
={(x1−x0)^2+(y1−y0)^2+(z1−z0)^2}{(x2−x0)^2+(y2−y0)^2+(z2−z0)^2}−{(x1−x0)(x2−x0)+(y1−x0)(y2−y0)+(x1−x0)(x2−x0)}^2
={(x1−x0)(y2−y0)−(y1−y0)(x2−x0)}^2+{(y1−y0)(z2−z0)−(z1−z0)(y2−y0)}^2+{(z1−z0)(x2−x0)−(x1−x0)(z2−z0)}^2
=|(x1−x0),(y1−y0)|^2+|(y1−y0),(z1−z0)|^2+
|(x2−x0),(y2−y0)| |(y2−y0),(z2−z0)|
|(z1−z0),(x1−x0)|^2
|(z2−z0),(x2−x0)|
となる.
△PQRの面積はS/2であるが,2次元の場合の
|S|=|x1 y1|
|x2 y2|
と比べると,次元がひとつあがっただけで計算量は3倍に増えたことになる.
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[1]四角形面
面積を三角形分割によって求めると
S’^2=2^5・3^2・7→S’=12√14
S’^2=2^5・3^2・5^2・7=60√14
中心から四角形面までの距離=15√14
12面あるから
72√14・15√14・12/3=60480
[2]八角形面
面積を三角形分割によって求めると
S’^2=2^5・3^5→S’=36√6
S’^2=2^5・3^3・5^2=60√6
S’^2=2^5・3^5・7^2→S’=252√6
S’^2=2^7・3^3・13^2=312√6
S’^2=2^7・3^5・7^2→S’=504√6
S’^2=2^5・3^5・5^4=900√6
中心から四角形面までの距離=15√6
6面あるから
2064√6・15√6・6/3=371520
[A]V=432000
空間充填18面体は体積に関しても整数多面体であったというわけである.
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