■ポアンカレ予想が解かれた!(かも)

 21世紀に残された3大問題として,リーマン予想,ポアンカレ予想,P=NP問題があげられています.2000年5月にアメリカのクレイ数学研究所が七つの懸賞問題を提出,各々の問題の解決に対して100万ドルの賞金が与えられることになりました.

  → 一松信「数学七つの未解決問題」森北出版

 これらのうち,ポアンカレ予想については2003年春にロシアの数学者ペレルマンが解決したというニュースが流れました.ポアンカレ予想とは「任意の3次元閉多様体M^3は3次元球面S^3に同相か?」というトポロジーに関する問いかけです.当時,ポアンカレ予想はサーストンの幾何化予想の系として解決されたとアナウンスされ,その後,専門家の間で彼のプレプリントが検討され,証明をチェックする作業に遅れがでているものの全体としては解決の方向に向かっていることが確認されているとのことでした.

 どうやら正しいらしいというのが大方の見解のようです.したがって,もっとも早く解決しそうなのはポアンカレ予想らしい・・・.ところが,当のペレルマン自身はその後もプレプリントをどの学術雑誌にも投稿する素振りも見せていないことが気にかかっておりました.

 そうこうしているうちに2006年,中国の2人の数学者によるポアンカレ予想解決の論文が Asian J Math,6月号に掲載されました.

  → http://www.asahi.com/international/jinmin/TKY200606050264.html

私はこのことを杉岡幹生氏から教えてもらったのですが,ポアンカレ予想はペレルマンによって解決されたとばかり思っておりましたから,非常に不可解に感じました.私だけでなく皆そう思ったはずです.

 その後もいまひとつ大きく取り上げられていないのがまた不可解.誰にも信用されず,たいして相手にされていないということなのでしょうか.それであれば懸賞金のための実績作りかと勘ぐりたくなります.いまのところ(下世話な話だが)100万ドルの行方がどうなるのか誰もわからないのですが,リーマン予想解決?のド・ブランジュ教授の場合のようにはっきりしないごたごたを生み出しただけで終わるのでしょうか.