■単純リー環を使った面数数え上げ(その5)
リー型の単純群は,無限個ある.A型からG型まで7種類あるとしてよく,さらにまた16種類に細分することができる.
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ドイツのキリングとフランスのカルタンのよる単純リー群(詳しくは複素コンパクト型単純リー群,古典線形群はみな含まれる)の分類の成功が大きな影響を与えた.既約ルート系の分類の基づいて,複素単純リー代数の分類を行ったものがカルタンの分類定理であり,それは『いかなる複素単純リー代数もAk(k≧1),Bk(k≧2),Ck(k≧3),Dk(k≧4),E6,E7,E8,F4,G2の型のものに限られる.』というもので,Ak,Bk,Ck,Dk型の複素単純リー代数は古典型,E6,E7,E8,F4,G2の型のものは例外型と呼ばれる.
階数1のルート系はA1の1種類に限られ,既約である.また,階数2のルート系はA1×A1,A2,B2,G2の4種類に限られる.A2型,B2型,G2型のルート系は既約であるが,A1×A1型のルート系は既約でない.階数nの既約ルート系は,Ak(k≧1),Bk(k≧2),Ck(k≧3),Dk(k≧4),E6,E7,E8,F4,G2の型のいずれかなのである.
ここで,複素単純リー代数の階数と次元との関係を表にしておく.
(1)Ak(k≧1) 同次特殊線形群,k(k+2)次元
(2)Bk(k≧2) 直交群,2k+1変数の2次形式,k(2k+1)次元
(3)Ck(k≧3) 斜交群,2k変数のパッフ形式,k(2k+1)次元
(4)Dk(k≧4) 直交群,2k変数の2次形式,k(2k-1)次元
(5)E6 78次元
(6)E7 133次元
(7)E8 248次元
(8)F4 52次元
(9)G2 14次元
(カルタンによりコンパクト単純リー群は,例外的なものを除き,A型,B型,C型,D型の4系列をなしていることが知られているが,そのうちの2系列
B型 SO(2n−1)(n≧2)
D型 SO(2n) (n≧3)
は回転群である.B型とD型はそれぞれ奇数次元と偶数次元の実ユークリッド幾何に対応している.なお,n=4が例外であることがこのことからもみてとれる.)
幾何学に群を積極的に応用することを最初に主張したのがクラインのエルランゲン・プログラム「空間内の距離を変えない変換は,群(合同変換群)をなす.幾何学とは合同変換群で不変な図形の性質を研究する分野である.」である.
単純リー群には9つの型がある.それらはA,B,C,Dと名づけられた4つの無限系列とE6,E7,E8,F4,G2と名づけられた5つの例外群であった.キリングやカルタンの研究は面白い幾何学がどれだけできるかという設問に対する解答でもあり,大ざっぱにいえば,A型が複素ユニタリ幾何,B型とD型がそれぞれ奇数次元と偶数次元の実ユークリッド幾何,C型が4元数上の幾何学,5つの例外型は8元数上の幾何学に対応しているのである.
4つの古典群,5系列の例外群,さらにそのうちで対称性をもつA,D,E6,D4の4系列,疑似対称性をもつB2,G2,F4の3系列で16系列,素数位数の巡回群と交代群も含めて総計18系列に細分される.
・−・・・・・−・ (An:n≧2のとき位数2の自己同型がある)
・
/
・−・・・・・ (Dn:n≧4のとき位数2の自己同型がある)
\
・
3
/
1−2 (D4:位数3の自己同型がある)
\
4
4
|
1−2−3−5−6 (E6:位数2の自己同型がある)
1=2 (B2) 1≡2 (G2) 1−2=3−4 (F4)
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