■単純リー環を使った面数数え上げ(その2)

 ユークリッド空間の有限群(正多面体)または無限離散群(空間充填形)になるのは,4つの無限系列と6つの例外的な場合に限る.

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【1】双対性とルート系

 3次元には5つの正多面体(プラトン立体)がある.リストアップすると,正4面体,立方体,正8面体,正12面体,正20面体である.正4面体はそれ自身と双対であり,立方体は正8面体と,正12面体は正20面体と双対である.

4次元空間の正多胞体

      境界多面体  頂点数  双対性         3次元対応

5胞体   正4面体     5  自己双対(非中心対称) 正4面体

8胞体   立方体     16  16胞体と双対     立方体

16胞体  正4面体     8   8胞体と双対     正8面体

24胞体  正8面体    24  自己双対(中心対称)

120胞体 正12面体  600  600胞体と双対    正12面体

600胞体 正4面体   120  120胞体と双対    正20面体

 4次元には6種類の正多胞体がある.正8胞体(4次元立方体)のほか,

  正5胞体(4次元正4面体:自己双対)

  正16胞体(4次元正8面体)

  正24胞体(相当する正多面体はない:自己双対)

  正120胞体(4次元正12面体)

  正600胞体(4次元正20面体)

である.正8胞体と正16胞体,正120胞体と正600胞体は互いに双対,正5胞体と正24胞体はそれぞれ自分自身に双対である.

n次元空間の正多胞体(n≧5)

        境界胞体    頂点   双対性  対応

(n+1)胞  n胞体     n+1  自己双対 正4面体・5胞体

2n胞体  (2n−2)胞体  2^n   2^n胞体 立方体・8胞体

2^n胞体    n胞体     2n 2n胞体 正8面体・16胞体

 双対性からみて,正4面体,正6面体,正8面体の多次元への拡張はわかりやすいと思われるが,3次元空間の正12面体,正20面体,4次元空間の24胞体,120胞体,600胞体は,より高次元においては対応するものをもたない.しかし,それよりも,三次元の場合はこれらの他に2つの正多面体<正十二面体と正二十面体>があり,四次元の場合は他に3つ<正24胞体,正120胞体,正600胞体>あるといったほうがわかりやすいだろう.

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 ここで最も気になるのが正24胞体である.正24胞体に相当する3次元正多面体はない.なぜかというと,正24胞体は自己双対かつ中心対称であり,3次元空間でそれに対応する正多面体はないからである.

 すなわち,正24胞体(24胞,正3角形のみからなる96面,96辺,24頂点)こそが,四次元特有の物体であると考えられるのであるが,正24胞体は,四次元空間で三次元空間の立方体にあたる正八胞体(8胞,24面,32辺,16頂点)と正八面体にあたる正十六胞体(16胞,32面,24辺,8頂点)を重ねてできることから,その意味で4次元版の菱形十二面体に相当する.

 24胞体は,すべての次元を通じて,単体以外の唯一の自己双対な正則胞体であって,例外中の例外といってもよいものであろう.この24胞体の対称性を,鏡映で生成される既約な有限群(ルート系)との関係でみても興味深いものがある.

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 平面を鏡映三角形で埋めつくす問題を一般の次元に拡張して,R^nの単体に置き換えて得られるベクトルの集合が一般の階数のルート系である.ルート系の分類は,それ自体大変面白いものらしいのであるが,既約ルート系の同型類には,A型からG型までのアルファベットに,添字として階数をつけた名前が付いていて,E8型ルート系などと呼ぶ習慣になっている.

 すなわち,ルートは鏡映を与えるベクトルとして理解することができるのであるが,8次元ユークリッド空間において,8次元単体(4面体の拡張)を鏡映したものからなるモザイク模様に対してベクトルの集合を考えることによって,たとえば,E8型ルート系が得られるというわけである.

 それによれば,階数nの既約ルート系は,Ak(k≧1),Bk(k≧2),Ck(k≧3),Dk(k≧4),E6,E7,E8,F4,G2の型のいずれかであり,既約ルート系の分類の基づいて,単純リー群を分類すると9つの型があり,それらはA,B,C,Dと名づけられた4つの古典型とE6,E7,E8,F4,G2と名づけられた5つの例外型であった(カルタンの分類定理).

 ルート系(リー型の単純群)はA型からG型まで7種類あるとしてよく,4つの古典群,5系列の例外群,さらにそのうちで対称性をもつA,D,E6,D4の4系列,疑似対称性をもつB2,G2,F4の3系列で16系列に細分することができる.

  ・−・・・・・−・  (An:n≧2のとき位数2の自己同型がある)

         /

  ・−・・・・・    (Dn:n≧4のとき位数2の自己同型がある)

         \

          ・

      3

     /

  1−2    (D4:位数3の自己同型がある)

      4

      4

      |

  1−2−3−5−6  (E6:位数2の自己同型がある)

  1=2 (B2)  1≡2 (G2)  1−2=3−4 (F4)

 n次元正単体とn次元立方体の対称群は,それぞれAn-1,Bn(Cn)で表されるのだが,24胞体は1つの例外型対称群F4をもつことが知られている.24胞体は単体以外の唯一の自己双対な正則胞体であるという事実がF4と関係しているらしく,この点もまた注目すべきものである.

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