■単純リー環を使った面数数え上げ(その1)

 先月,京都大学数理解析研究所で行われた「タイル張り力学系とその周辺」の研究会で,

  space filling semi-regular polytopes and their Wythoff arithmetic

を講演.

 そこでは幾何学的な方法や多面体的組み合わせ論の方法を用いて,空間充填準正多胞体の諸量の計算結果について発表したところ,参席のムーディー先生からいろいろなサジェスチョンを賜った.コクセターが整理した群論的な方法を使って,計量を行うことができるのではというものであった.

 確かに,算術的方法は直観的でストレートであるが,いささか複雑であるのに対し,代数的方法はスマートであるように見えるかもしれない.しかし,「ワイソフ算術」を使えばf0,f1,fn-1の計量は容易に可能となることを申し添えておきたい.(算術的方法の勝ち?)

 その後,ムーディー先生から古典的な単純リー環を使った面数数え上げの論文が送られてきた.

 RV Moody, J Patera: Voronoi and Delaunay cells of root lattices: classification of their faces and facets by Coxter-Dynkin diagrams, J Phys A Math Gen 25(1992), 5089-5134

 その論文では,たとえば,以下のような内容を扱っている.(代数的方法の勝ち?)

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【1】半立方体(hemicube)

 n次元の立方体(頂点数2^n)のひとつおきの頂点において,そこと相隣る頂点全体を通る超平面で切り落として残る図形は半立方体(hemicube)と呼ばれる.たまたま,3次元では正四面体,4次元では正16胞体となるが,5次元以上ではそれほど簡単な図形ではない.

 5次元の場合は,16個の正5胞体と10個の正16胞体で囲まれた立体(中心対称ではない)である.6次元になると,この図形12個と5次元の正単体32個で囲まれた図形である.

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【2】半立方体の要素数

 半立方体(n次元の超立方体において,ひとつおきの頂点(全体で2^n-1個)を結んでできる図形)の要素数を計算してみたところ,やはり,7次元までは個別にうまく計算できたものの8次元でゆきづまりました.n≧4では側面(1次元低い胞)が2種類現れて,次元を下げていってもf4以上で2種類の図形が複雑に絡み合うのが原因です.

 3次元:(f0,f1,f2)=(4,6,4)   (正四面体)

 4次元:(f0,f1,f2,f3)=(8,24,32,16)   (正16胞体)

 5次元:(f0,f1,f2,f3,f4)=(16,80,160,120,16+10)

 6次元:(f0,f1,f2,f3,f4,f5)=(32,240,640,640,192+60,32+12)

 7次元:(f0,f1,f2,f3,f4,f5,f6)=(64,672,2240,2800,1344+280,448+84,64+14)

 f2は正三角形,f3は正四面体,f4以上で2種類の形の各々の和

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