■幾何学におけるマイ未解決問題(その17)
もう少し回顧してみたい.
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DNAはそれぞれの場所で4つの塩基(A・C・G・T)をもっている.ここでは10個の塩基配列で考えられるすべての集合(アンサンブル)を考える.その位数は4^10である.このDNA空間は自然な距離をもつ計量空間になっている.
たとえば,
AAAAAAAAAA
と3つの点突然変異
AAAAACAAAA
AAAAACTAAA
AAGAACTAAA
を考えると,AAAAAAAAAAから最も遠いのはAAGAACTAAAである.
一方,10次元の多面体での位数は2^10−1である.正軸体の場合,1000000000から最も遠いのは当初0000000001と考えたのであるが,正単体の場合,両者は一致するので,一般的に自然な距離構造ではないと思われる.これらから最も遠いのは1111111111であると考えるほうが自然な成り行きであろう.
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私が多面体のDNAと呼んでいるものは,たいていの数学者は目にしたことがなく,目にしたとしても単なる個体識別番号と思ってしまい,遺伝子だとは気づかないであろう.それでも多面体はれっきとしたDNAをもっている.その機能を生物的プロセスにあてはめるとDNAにほかならないからである.
また,DNAであるならば近縁にあるかどうかで系図が描けるはずである.実際,これまで知られていないようなグラフを描くことができた.
それがどうしたとたいていの人はいうかもしれない.確かに,ヒトを作る遺伝子を列挙(ヒトゲノム計画:HGP)しても,ヒトについて知りたいことがすべてわかるわけではないが,ヒトを解きあかす上で大きな困難のひとつは克服されるに違いない.
多面体のDNAは次元や空間の秘密を解きあかす上で重要と考えられる所以である.(このことに気づいたからよかったもののそうでなければすんでのところで忘れ去られるところだった.)
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