■計算可能な多胞体(その39)
コラム「フォン・ノイマンが間違えた問題(その4)」では算術的(arithmetic)か,代数的(algebraic)か,その優劣比較というわけではないが,両者の特徴をあげてみた.
一般に,算術的方法はより容易に計量できるため自然の要求にあった方法といえる.一方,代数的方法は算術的方法ほどには直感に訴える意味を持ち合わせておらず,計算機の助けなしにはほとんど不可能な場合もある.すなわち、前者のほうが直感的で人の心にストレートに訴えるものがあるが往々にして失敗するのに対し,後者は論理を優先し面白味に欠けるが着実であるというわけである.
このような二分法の対立はいろいろな分野で見られることであって,今回のコラムでは,多面体の中からそのような例を拾い出してみたい.
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【1】V多面体vsH多面体
一般に,与えられた球面上に勝手に点を打って,接平面を作っていけば,内接球をもつ多面体を作ることができる.一方,外接球にすべく,勝手に取った点をつないで線は引けても,面を構成するには相手を選んで線を引かねばならないし,逐次的に行うのも大変である.
多面体を頂点集合として与えるのがV多面体,半空間のインターセクションとして与えるのがH多面体である.以下,V多面体とH多面体の特徴を比較してみたい.
準正多面体を木工製作する際,もとになる正多面体(母正多面体)を切頂,切稜することになる.そのため,母正多面体の表面に切削のためのマークをつける.このような構成法では頂点の位置をマークするV多面体が断然有利である.
しかし,多面体はa・x=cなる平面を与えて,その半空間の共通部分として構成することもできる(H多面体).この場合は,木工製作の役には立たないが,論文を記述する場合に大いに役立ってくれた.
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【2】二分法の対立
現在,このシリーズのまとめの論文を書いている.
[1]空間充填2^n+2n面体
[2]空間充填2(2^n−1)面体,3^n−1面体
[3]ワイソフ算術
[4]ワイソフ算術の応用
の4部構成になるが,ちょうど[1]が完成したばかりである.
空間充填2^n+2n面体は立方体・正軸体の切頂準正多面体であるから,H多面体としてcを1個与えれば多面体を記述することができる.それに対して,V多面体として記述するためにはn次元の頂点座標(n個)を与えなければならないので煩雑になる.
実際,[1]ではH多面体が奏効(H多面体の勝ち)したが,[2]になると,n個のciが必要になるし,そうであればV多面体と記述しても同じことである.
結局,[1]ではH多面体がスマートだったのは,c1個でたやすく解けたからであって,そのような場合は稀である.うまく解けない場合にはじつはV多面体が勝ちで,ワイソフ算術もV多面体を基本にしているのである.
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