■素数定理の漸近評価とチェビシェフの定理(その3)
素数が無限個あることがわかりましたが,ガウスは,π(x)をx以下の素数の個数とすると,
π(x)〜x/logx (x→∞)
が成り立つだろうと予想しました.この予想はリーマンの研究を経て,1896年,フランスの数学者アダマールとプーサンによって証明されました.これを素数定理といいます.
また,素数は,4で割って1余る素数と4で割って3余る素数の2種類に分類できます(2だけは例外).前者の素数はつねに2つの2乗数の和となりますが,後者の素数は決してその形には表せません.
(例)13=2^2+3^2,19=?^2+?^2
この定理はフェルマー・オイラーの2平方和定理として知られています.
それでは,4で割って1余る素数と4で割って3余る素数では,どちらが多いでしょうか? 実は,4で割って1余る素数,4で割って3余る素数の逆数和がともに無限大になり,どちらも無限個あってほぼ同じくらい存在することが示されています.
π4,1(x)〜π4,3(x)〜1/2・x/logx
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【1】10を原始根とする素数
1/7=0.142857142857・・・
(循環節:142758の長さ6)
1/17=0.0588235294117647・・・
(循環節:0588235294117647の長さ16)
のように,1/pを10進法で小数展開したときの循環節の長さがp−1となる特別な素数を10を原始根とする素数といいます.
10を原始根とする素数,たとえば,
7,17,19,23,29,47,59,61,97,・・・
の密度について,アルティンは
π10(x)=Cx/(logx)
と予想しています.
ただし,pを素数として,Cは
C=Π(1−1/p(p−1))=0.37395・・・(アルティンの定数)
ここでふたたび,オイラー積のアナログ:アルティン積が出現しました.もし,これが正しいとすれば,このような素数は無限にあり,素数全体のうち約3/8を占めることになるのですが,残念ながら証明されていません.
しかしながら,リーマン予想:ζ(s)の零点がs=−2,−4,・・・,−2nとs=1/2+tiの線上にある:が正しいと仮定するとアルティン予想(素数のうち37.4%が10を原始根とする素数である)の成り立つことが証明できることがわかっています.
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