■多元環とリー群(その14)

 代数的構造では,3つの演算(加・減・乗)が成り立つものを環,2つの演算(加・減または乗・除)が成り立つものを群,1つの演算が成り立つものをモノイドと呼ばれる.

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 複素数は平面における回転と変形を表すが,四元数は空間における回転と変形を表す.ベクトルは回転させることができないが,四元数は回転そのものであって,ベクトルとは区別してスピノルと呼ばれる.

 陽子・中性子・電子など3次元で回転するものを表すのに,四元数は使われるが,四元数のかけ算では交換法則は成り立たない.たとえば,

  i・j=k,j・i=−k

 さらに八元数になると,かけ算の交換法則まで成り立たなくなる.(ab)cは必ずしもa(bc)とはならないのである.

 こうなると,つぎは十六元数といきたいところであるが,割り算も失うことになり,この時点で多元数はおしまいである.

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 素粒子の対称性を表すのに,群論が用いられる.ゲル・マンの研究ではスピン角運動量を決めるSU(3)という8次元の群が使われ,彼はそれを仏教にちなんで,八道説を呼んだ.

 そして,宇宙には2種類の粒子があり,ひとつはボーズ粒子で,整数スピン(0,±1,±2,・・・)をもち,2つの粒子を交換しても符号は変化しない.その代表は光子である.

 もう一つはフェルミ粒子で,半整数スピン(±1/2,±3/2,・・・)をもち,波動関数は四元数的(スピノル)で,粒子の交換により符号が変化する.通常の物質の基本粒子(陽子・中性子・電子)はすべてフェルミ粒子である.

 また,ボーズ粒子には集合する性質があり,それを利用してレーザーに使われる.逆に,フェルミ粒子には離散する性質があるため原子には電子軌道があるというわけである.

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