■多元環とリー群
抽象代数学が発展し,いまとなっては何百もの代数構造が数学では使われている.それぞれが独自の公理系によって定義されている.
代数学(algebra)は数学用語で多元環(線形空間に積の構造が入ったもの)である.多元環(algebra)はそれぞれ異なった公理系で指定される.たとえば,乗法についての結合法則が成り立たない場合は,通常の行列の積ではなくて,交換積:XY−YXに依って定義した場合はリー代数という多元環になる.
リー群が現代数学において重要なのは,古典力学や量子力学,光学などの多くの系は対称性をもっており,その対称性はリー群の構造をしているからである.
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【1】リー
リー群は連続変換群であって,代数的な性質と位相的な性質を併せもっている.すなわち,群であり位相多様体であり,しかも代数演算が連続となる.リー群の簡単な例として円の回転運動や3次元空間の回転運動全体のなす郡がある.
リーは連続変換群の微分操作によって導かれる無限小変換の全体はもとの群演算について閉じておらず,ブラケット積
[X,Y]=XY−YX
について閉じている(リー代数)という無限小変換の性質に着目した.
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【2】キリング
キリングはすべての単純リー代数の構造を解明するための分類作業を行った.たとえば,特殊線形リー代数sl(n)について,複素数を成分とするn×n行列全体を考えると,対角線の和が0になる行列全体は単純リー代数になり,n^2−1次元の多様体である.そして,彼は単純リー代数にルート系と呼ばれる幾何学構造を対応させたのである.
そして,彼は単純リー代数がAn(n+1次元空間の正則な線形変換全体からなる群),Bn(2n+1次元の回転群),Cn(2n次元のシンプレクティック群),Dn(2n次元の回転群)の4系列とG2,F4,E6,E7,E8の5つの例外に分類した.例外リー代数の次元はそれぞれ12,56,78,133,248である.
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