【1】ドミノ問題
まずは有名な不可能問題を紹介しよう.
(Q)隅とそのちょうど反対側の隅にあるマス目を切り取った8×8のチェス盤を31個のドミノ(2マスサイズ)では覆いつくすことはできるだろうか?
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(A)チェス盤を市松模様に塗ると32の黒マス,32の白マスができる.2つの向い側の白い角を取り除くと32の黒,30の白ができる.しかし1枚のドミノを置くとき,黒と白の正方形が1つずつ覆われるからどうしても2つの黒い正方形が残ってしまう.
このように隅を切り取られたチェスボードでは白か黒どちらかのマス目が多くなるため,ドミノでは覆いつくすことができないのである.それでは・・・
(Q)どの2つの正方形を切り取ろうとも,切り取った正方形の色が異なるならば必ずドミノを敷き詰めることができるだろうか?
(A)yes.敷き詰め方の具体的構成法は自分で考えてみてほしいのだが,8×8のマス目を64個の数珠状の輪にする.2つの正方形が除かれると輪は2つの部分に切断される.2つの正方形が違う色であれば,切断された部分は必ず偶数の正方形を含むことになる.
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9×9マスの将棋盤ではどうだろうか? 隅とそのちょうど反対側の隅にあるマス目を切り取った将棋盤は79マスであるから,ドミノで覆いつくすことができないことは明らか.そこで隅を1マスだけ切り取った将棋盤について考えることにするが,敷き詰めが可能であることは簡単にわかる.
それでは
(Q)どの1マスを切り取ろうとも,ドミノを敷き詰めることができるだろうか?
(A)No.将棋盤のマス目(i,j) (i=1~9,j=1~9)に対してi+jの合計を考えると偶数の場合と奇数の場合があり,81マス全体での合計は偶数になる.1枚のドミノで覆われる2マスのi+jの合計は奇数であるから,40枚のドミノで覆われる2マスのi+jの合計は偶数.したがって,i+jの合計が奇数のマス目(奇数点)を切り取った場合,80マスの合計は奇数となって,敷き詰めは不可能である.
9×9のマス目は数珠つなぎにならないので,たとえば,隅の隣りにある1マスを切り取った場合,一番隅の正方形が残りの部分から孤立するのである.こうして15パズルの場合の結論,反転の個数の合計が偶数ならば解くことは可能であるが奇数ならば解法は存在しない,と類似の結果となった.
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【2】トロミノ問題
(Q)L字型のトロミノ
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を合同な4片に分割せよ.
(A)
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(Q)2^n×2^nの格子盤から1個のマス目を切り取ったものは,すべてL字型トロミノ
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で覆いつくすことができるか?
(A)2×2から1マス切り取ったものはトロミノであるから,n=1のとき覆いつくすことができることは明らか.nのとき覆いつくすことができると仮定して,2^n+1×2^n+1の格子盤から1マス切り取ったものを考える.
この格子盤を4等分して,中央部から
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を取り去ると,1マス取り去られた2^n×2^nの格子盤が4つできる.仮定より,これら4つの格子盤はトロミノで覆いつくすことができるから4つ合わせれば任意の1マスを切り取った2^n+1×2^n+1の格子盤になる.
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こうして数学的帰納法による証明が完了したというわけであるが,ところで2^n×2^n−1が3で割り切れることが問題の前提条件として必要である.フェルマーの小定理より
2^n×2^n=4^n=1 (mod 3)
であるが,連続するk個の整数の積がk!で割り切れることを使えば(フェルマーの小定理のごとき牛刀をもちだすまでもなく)3で割り切れることを証明することができる.
(2^n−1)2^n(2^n+1)は6で割り切れる
→(2^n−1)(2^n+1)は3で割り切れる
→2^n×2^n−1は3で割り切れる
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【3】ペントミノ問題
(Q)ペントミノ
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を4等分せよ.
(A)
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正方形を正三角形に変えるとスフィンクスになる.スフィンクス
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も同様に図形を4つに等しく分けることができる.
△
△▽△
△▽▲▽△▽△▽▲
▲▼▲▼▲▽▲▼▲▼▲
切り分けられた図形は再びスフィンクスになるが,この関係は外側にも内側にも無限に続くことになるので,次々に大きなスフィンクスを作り上げることができる(平面充填).
(Q)ペントミノは何種類あるか?
(A)ペントミノは12種類ある.
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そのうち
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を除く9種類は4個の合同な片に分解できることが確かめられている.しかもその形は一意である.
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(Q)ペントミノで長方形を敷き詰めることができるものは何種類あるか? また,長方形を敷き詰めるのに必要な最小枚数は何枚か?
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(1) (2) (10) (2)
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【4】nオミノ問題
(Q)同じ大きさの正方形の辺と辺をつなげたタイルで,正方形をn枚使ったものをnオミノと呼ぶ.nオミノは何種類あるか?
(A)回転や反転で同型になるものは同じと数えると,モノミノ(1),ドミノ(1),トロミノ(2),テトロミノ(5),ペントミノ(12),ヘキソミノ(35),ヘプトミノ(108),・・・.別に数えると,モノミノ(1),ドミノ(2),トロミノ(6),テトロミノ(19),ペントミノ(63),ヘキソミノ(216),ヘプトミノ(760),・・・
nオミノの種類はnとともに急速に増加する.前者の個数をPn,後者の個数をQnと表すと
n Pn Qn n Pn Qn
1 1 1 10 4655 36446
2 1 2 11 17073 135268
3 2 6 12 63600 505861
4 5 19 13 238591 1903890
5 12 63 14 901971 7204874
6 35 216 15 3426576 27394666
7 108 760 16 13079255 104592937
8 369 2725 17 50107911 400795860
9 1285 9910 18 192622052 1540820542
大きなnに対して
Qn 〜 a^n (a=3.72〜4.5)
Pn 〜 Qn/8
という漸近評価が得られている.
この数え上げは
[参]「スチュアート教授のおもしろ数学入門」日経サイエンス社
から転載したものであるが,漸近評価を含む数え上げについては
コラム「飽和炭化水素の構造異性体数」
が参考になる(はずである).
ちなみに,長方形を敷き詰めることができるものは
モノミノ (1/1)
ドミノ (1/1)
トロミノ (2/2)
テトロミノ (4/5)
ペントミノ (4/12)
ヘキソミノ (10/35)
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