■レムニスケート積分(その1)
[1]∫(sinx)^1/2dx=2∫y^2dy/(1−y^4)^1/2
[2]∫(tanx)^1/2dx=2∫dy/(1−y^4)^1/4
[3]∫(sinx)^-1/2dx=2∫dy/(1−y^4)^1/2
[1][3]はy^2=sinxと変数変換した楕円積分であり,とくに[3]はレムニスケート積分と呼ばれている.[2]はy^2=cosxと変数変換したものであるが,楕円積分ではない.
[4]∫(0,1)dx/(1−y^n)^1/n=π/(nsinπ/n)
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【1】レムニスケート積分の倍角公式
ベルヌーイはレムニスケートの弧長を
f(x)=1/(1-x^4)^(1/2)
u=F(x)=∫(0,x)f(t)dt
と表しました.これがレムニスケート積分と呼ばれる典型的な楕円積分です.また,
∫(0,1)f(t)dt=1.311028・・・=ω
とおくと,4ωがレムニスケートの全長になります.円に類比すると,レムニスケートの定数(レムニスケート周率)ωは円に対する円周率πと同じ役割を演じていることになります.
F(x)の逆関数であるレムニスケートサインsl(u)も周期4ωをもつことがわかります.レムニスケートサインを求めてみることにしましょう.実際に1/(1-x^4)^(1/2)を2項展開し,さらに項別積分すると
F(x)=x+1/10x^5+1/24x^9+5/208x^16+・・・
この逆関数のべき級数展開は
sl(u)=u-1/10u^5+1/120u^9+11/15600u^13+・・・
=u(1-1/10u^4+1/120u^8+・・・)
=ug(u^4)
となります.
円積分では
x=sinu,f'(u)=dx/du=1/du/dx=(1-x^2)^1/2=y(=cosu=sin'u)
よりx,yはともにパラメータuの関数になりましたが,レムニスケート積分でもx=sl(u),y=sl'(u)はともにパラメータuの関数になり,曲線y^2=1−x^4はx=sl(u),y=sl'(u)によってパラメータ表示できます.
ここで,sl(2u)をsl(u)の関数として表せればよいことになるのですが,レムニスケートサインの倍角の公式(あるいは加法定理)は
sl(u+v)=(sl(u)sl'(v)+sl(v)sl'(u))/(1+sl^2(u)sl^2(v))
sl(2u)=2sl(u)sl'(u)/(1+sl^4(u))
sl'(u)=(1-sl^4(u))^1/2
sl(2u)=2sl(u)(1-sl^4(u))^1/2/(1+sl^4(u))=2x(1-x^4)^1/2/(1+x^4)
のようになります.レムニスケートサインとその導関数が正弦関数とその導関数である余弦関数にいかに類似しているかわかるでしょう.
2u=sl^(-1)(2x(1-x^2)^1/2/(1+x^4))
したがって,レムニスケート積分の倍角公式
2∫(0,x)f(t)dt=∫(0,2x(1-x^4)^1/2/(1+x^4))f(t)dt
2G(x)=G(2x(1−x^4)^1/2/(1+x^4))
が成り立ちます.
2x(1-x^4)^1/2/(1+x^4)もxから四則演算および平方根により得られますので,円同様,レムニスケートも定規とコンパスだけで弧長を2倍にする作図が可能であることを示しています.
1751年,オイラーは逆正弦関数の加法定理
G(x)+G(y)=G(x(1−y^2)^1/2+y(1−x^2)^1/2)
との類似に基づいて,レムニスケート積分に対する加法定理
G(x)+G(y)=G((x(1−y^4)^1/2+y(1−x^4)^1/2))/(1+x^2y^2))
を構成することに成功しています.
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