■ヒルツェブルフの符号数定理とベルヌーイ数(その5)
x/tanhx=2x/(exp(2x)−1)+x
は「ヒルツェブルフの等式」と呼ばれていて,左辺はL種数の母関数,右辺第1項がリーマン・ロッホ型定理で重要な役悪を果たすトッド種数の母関数を表していて,これらがひとつの等式で繋がっているというわけです.
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【1】ヒルツェブルフのL種数とポントリャーギン類
母関数を考えるときには,収束するかどうかは問題にせず,多項式を考えるのですが,それを形式的ベキ級数と呼びます.ここでは,形式的ベキ級数の等式としてニュートンの恒等式を導き出したのと同様の方法,すなわち,αiを交点行列の固有値として,チャーン多項式
f(t)=Π(1+tαi)=Σckt^k (ckはチャーン類,c0=1)
を考えれば,チャーン標数は
ch=n+Σsk/k! (skはベキ乗和)
=ch0+ch1+ch2+ch3+・・・
ただし,
ch0=n
ch1=c1
ch2=1/2(c1^2−2c2)
ch3=1/6(c1^3−3c1c2+3c3)
ch4=1/24(c1^4−4c1^2c2+2c2^2+4c1c3−4c4)
chn=chn(c1,・・・,cn)
とチャーン類で書き下すことができ,これがチャーン標数の定義となります.
(リーマン・ロッホの定理の一般形は,チャーン類とトッド類と呼ばれるものを使って書かれるが,ここでは,トッド類まで解説する余裕がない.トッド種数もチャーン類の有理係数多項式であり,
td1=1/2c1
td2=1/12(c1^2+c2)
td3=1/24c1c2)
td4=1/720(−c1^4+4c1^2c2+3c2^2+c1c3−c4)
で表される.)
ポントリャーギン類については,
f(t)=Π(1+tiαi)=Σpkt^k (pkはポントリャーギン類,p0=1)
で定義され,
1−p1+p2−・・・±pn=(1−c1+c2−・・・±cn)(1+c1+c2+・・・+cn)
より,チャーン類とは
pk=ck^2−2ck-1ck+1+・・・+2c1c2k-1−2c2k
で関係しています.
また,ベキ級数
g(x)=√(x)/tanh√(x)
=1+1/3x−1/45x^2+・・・+(-1)^(k-1)2^(2k)/(2k!)・Bk・x^k+・・・
として,Πg(x)がヒルツェブルフのL種数の母関数となっていますから,したがって,ヒルツェブルフのL種数は,
L=Πg(x)=1+Σ(-1)^ksk
=ΣLn=L0+L1+L2+L3+L4+・・・
ポントリャーギン類を用いて書くと
L0=1
L1=1/3p1
L2=1/45(7p2−p1^2)
L3=1/945(62p3−13p2p1+2p1^3)
L4=1/14157(381p4−71p3p1−19p2^2+22p2p1^2−3p1^4)
Ln=Ln(p1,・・・,pn)
によって定義されます.
多様体の符号数はポントリャーギン数の1次結合として表されることが示されていて,任意の多様体のL種数は整数ですから,ポントリャーギン数p1[M^4]は3で割り切れるし,7p2[M^8]−p1^2[M^8]は45で割り切れます.これを用いると,ヒルツェブルフのL多項式:Ln(p1,・・・,pn)におけるpnの係数が
2^(2k)(2^(2k-1)−1)/(2k!)・Bk
になることが証明されます.
こういうわけで,ヒルツェブルフの符号数定理と彼による一般化されたリーマン・ロッホの定理(リーマン・ロッホ・ヒルツェブルフの定理)の出現以来,トポロジストにとってベルヌーイ数とその数論的性質を知ることは大変有益なものになっているのです.
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[1]L種数
(√x)/tanh(√x)=1+x/3−x^2/45+2x^3/945−・・・+(−1)^n-12^2nBnx^n/(2n)!+・・・
L0=1
L1=1/3p1
L2=1/45(7p2−p1^2)
L3=1/945(62p3−13p2p1+2p1^3)
L4=1/14157(381p4−71p3p1−19p2^2+22p2p1^2−3p1^4)
Ln=Ln(p1,・・・,pn)
[2]A種数
(√x/2)/sinh(√x/2)=1−x/24+7x^2/896+31x^3/967680+・・・
A1=−1/24p1
A2=1/5670(−4p2+7p1^2)
A3=1/967680(16p3−44p2p1+31p1^3)
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