■ウォリスの公式とオイラー積(その21)
【1】正規化された多重三角関数
じつは多重化三角関数Sr(x)はほんの序章であって,正規化された多重三角関数Sr(x;(ω1,ω2,・・・,ωr))の話しに繋がっていき,さらに新型保型形式論へと発展しています.
S2(1/2;(1,1))=2^(1/2) ←→ I=∫(0,π/2)log(sinx)dx=-π/2log2
ζ(3)=16π^2/3log(2^(-1/8)/S3(3/2;(1,1,1)))
S3(1/2)=S3(3/2;(1,1,1))^14/32^(5/6)
ζ(3)=16π^2/3log(2^(3/8)/S3(1/2))
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[補]ゼータとポリログ関数
ζ(3)=2π^2/7log2+16/7∫(0,π/2)xlog(sinx)dx
の∫(0,π/2)xlog(sinx)dxはログサイン積分とも呼ぶべきものですが,ここでゼータ関数に関係するポリログ関数(polylogarithm)を導入することにしましょう.
ポリログ関数は
ジログ関数(アーベル・ロジャース・スペンス関数):
L2(x)=Σx^n/n^2=-∫(0,x)log(1-t)/tdt
Ln+1(x)=∫(0,x)Ln(t)/tdt
のように積分で定義される関数(積分関数)ですが,
トリログ関数:L3(x)=Σx^3/n^3,
テトラログ関数:L4(x)=Σx^4/n^4,
ペンタログ関数:L5(x)=Σx^5/n^5,
・・・・・・・
などを総称してポリログ関数と呼びます.
特に
Ln(1)=(-1)^(n-1)/(n-1)!∫(0,1){log(t)}^(n-1)/(1-t)dt
=ζ(n)
より,Ln(1)はゼータ関数の特殊値となります.
ポリログ関数の公式を用いると,オイラーの等式
ζ(3)=2π^2/7log2+16/7∫(0,π/2)xlog(sinx)dx
に相同な等式
L3(1)=ζ(3)=5/4L3(φ^(-2))+2π^2/15logφ-2/3(logφ)^3
φ=(1+√5)/2
を得ることができます.
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[補]その他の多重化関数
多重ゼータ関数,多重ガンマ関数,多重ポリログ関数などについてはよく知らないのですが,いずれも多変数化したものを指すようです.
したがって,多重ガンマ関数とポリガンマ関数はまったく別物です.ガンマ関数の対数微分であるジガンマ関数φ(x)は
φ(x)=d/dx{logΓ(x)}=Γ'(x)/Γ(x)
で定義されます.また,その逐次導関数φ’(x),φ”(x),・・・,φ(k)(x),すなわち,トリガンマ関数,テトラガンマ関数,ペンタガンマ関数などを総称してポリガンマ関数と呼びます.
なお,ガンマ関数にも多重サイン関数のような無限積表示
Γ(x)=∫(0,∞)t^(x-1)exp(−t)dt
=1/xΠ(1+1/n)^x(1+x/n)^(-1)
が知られています.
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