■群と魔方陣(その4)

 1次魔方陣はあまりにもつまらない.2次魔方陣は存在しない.1から9までの数字を3×3マスにあてはめる3次魔方陣は回転や鏡映をのぞいてただ1種類である.1から16までの数字を4×4マスにあてはめる4次魔方陣は回転や鏡映をのぞいて880種類ある.1から25までの数字を5×5マスにあてはめる5次魔方陣は回転や鏡映をのぞいて275305224種類あることがわかっている.6次魔方陣は何個あるかわからないほどある.急速に複雑さが増していくのである.

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【1】有限確定値?

 有限確定値ではないのであるが,ドイツのトルンプは彼のウェブサイトで

  6次魔方陣・・・1.775399×10^19(1800京)個径

  7次魔方陣・・・3.79809×10^34個

  8次魔方陣・・・5.2225×10^54個

と,30次魔方陣までの総個数の概数を載せているそうである.

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【2】2元1次形式による整数の表現とシルヴェスターの定理

 互いに素な2つの整数a1,a2が与えられたとき,非負整数が存在して

  m1a1+m2a2=n

が成り立つことは,硬貨の言葉に置き換えるとa1円玉とa2円玉を用いてn円が支払えることを意味する.どの額が支払えるか,支払えない最高額はいくらかという問題が考えられるところである(この問題はフロベニウスの硬貨交換問題と呼ばれる).

 支払えない最高額をフロベニウス数と呼び,g(a1,a2)で表される.

  g(a1,a2)=a1a2−a1−a2=(a1−1)(a2−1)−1

で与えられ,1と(a1−1)(a2−1)の間にある整数のちょうど半数が表現可能である.たとえば,a1=4,a2=7の場合,g(a1,a2)=17で,表現不可能な整数の数は(a1−1)(a2−1)/2=9となる.

 シルヴェスターの定理の証明は母関数

  f(z)=1/(1−z^a1)(1−z^a2)z^n

の定数項と関連しているが,硬貨が3枚以上になると格段複雑になり,n元1次形式に対する公式はほとんど成功しなかった.n=3の場合は,セルマー・ベイヤーによって明示的な形で解決されたが,n≧4の場合には一般的な公式は知られていない.

 n×n正方行列で各行各列の和が同じになるものを半魔方陣Hn,主対角線の和も同じになるものを魔方陣Mnと呼ぶと,それぞれの魔方陣の数も母関数の定数項と関連している.魔方陣の数を数え上げる問題の研究は20世紀になってからようやく始まったものである.

  [参]ベック,ロビンズ「離散体積計算による組合せ数学入門」シュプリンガー・ジャパン

 トーラス上の魔方陣,立体魔方陣などについては

  [参]大森清美「魔方陣の世界」日本評論社

を参照されたい.

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