■ウォリスの公式とオイラー積(その6)
【1】グレゴリー・ライプニッツ級数
πと関連をもつ無限級数として最初に発見されたものは,1671年に発見されたグレゴリー・ライプニッツ級数
π/4=arctan1
=1/1−1/3+1/5−1/7+1/9−1/11+・・・
=Σ(−1)^(n-1)・1/(2n+1)
があげられます.ライプニッツはπ/4がすべての奇数の逆数を交互に加えたり引いたりしてえられる無限級数の和に一致するという事実に対して「神は奇数で楽しむ」と書いていて,この式に自然の神秘の深遠さを感じ,外交官への道から数学の研究の道に転じたといわれています.
arctan1=π/4を利用したこの展開公式は簡単な形の式ですが,ゆっくりとしか収束しないので,20項まで計算しても3.042までしか求まらないし,3.14まで一致するのに300項も必要です.第n項まで計算したときの誤差は大体1/(2n+3)になり,1000項まで計算してもせいぜい3桁ぐらいです.したがって,グレゴリー・ライプニッツ級数はπの近似値を求めるのには実用的ではありません.
[補]グレゴリー・ライプニッツ級数:1/1−1/3+1/5−1/7+1/9−1/11+・・・のオイラー積は
(1+1/3)^-1・(1−1/5)^-1・(1+1/7)^-1・(1+1/11)^-1・(1−1/13)^-1・・・
というように素数についての積の形に書き直すことができます.
[補]級数
1/1−1/2+1/3−1/4+・・・
は調和級数
1/1+1/2+1/3+1/4+・・・→ +∞
の交代級数である.この値は対数関数のマクローリン展開
log(1+x)=x−1/2x2 +1/3x3 −1/4x4 +・・・
においてx=1とおくとlog2に収束することがわかる.この値はメルカトールの定数とかグレゴリーの定数と呼ばれている定数である.
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【2】オイラーとバーゼル問題
また,オイラーは何年もオイラー級数(1735年)
π^2/6=1+1/2^2+1/3^2+1/4^2+1/5^2+・・・
にとりつかれて,そこに円周率πが現れることに大いに驚き,感動したのであった.
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sinxのテイラー展開によって,無限級数
sinx=x−x^3/3!+x^5/5!−x^7/7!+・・・
sinx/x=1−x^2/3!+x^4/5!−x^6/7!+・・・
が示される.
それでは,任意のxに対して,無限積公式
sinx/x=cosx/2cosx/4cosx/8・・・
も示しておこう.
(証明)
sinx=2sinx/2cosx/2
=4sinx/4cosx/4cosx/2
=8sinx/8cosx/8cosx/4cosx/2
・・・・・
=2^nsinx/2^ncosx/2^n・・・cosx/2
書き直すと
sinx=x[sin(x/2^n)/(x/2^n)]cosx/2・・・cosx/2^n
ここで,n→∞のとき,
sin(x/2^n)/(x/2^n)→1
であるから,sinxの無限積表示
sinx=xΠcosx/2^n
=x(1−x^2/π^2)(1−x^2/4π^2)(1−x^2/9π^2)・・・
が得られる.この結果は,sinxがx=0,±π,±2π,±3π,・・・のとき,0になることに一致している.
cosxの無限積表示
cosx=(1−4x^2/π^2)(1−4x^2/9π^2)(1−4x^2/25π^2)・・・
を用いているが,tanxに対しては,部分分数の無限級数表示
tanx=8x[1/(π^2−4x^2)+1/(9π^2−4x^2)+1/(25π^2−4x^2)+・・・]
が成り立つ.
x=π/4とすると,
1=4/π(1−1/3+1/5−1/7+・・・)
であるから,グレゴリー・ライプニッツ級数
π/4=1−1/3+1/5−1/7+・・・
が導かれる.
グレゴリー・ライプニッツ級数はπを含んでいる無限級数として最初のものなのだが,オリジナルは
arctanx=x−x^3/3+x^5/5−x^7/7+・・・
から発見されたものである.
また,x→0としたときのtanx/xの漸近挙動から,
π^2/8=1/1^2+1/3^2+1/5^2+・・・
さらに,
S=1/1^2+1/2^2+1/3^2+・・・
=1/1^2+1/3^2+1/5^2+・・・+1/2^2+1/4^2+1/6^2
=1/1^2+1/3^2+1/5^2+・・・+1/4[1/1^2+1/2^2+1/3^2+・・・]
=π^2/8+S/4
したがって,
S=1/1^2+1/2^2+1/3^2+・・・=π^2/6
となるが,これはオイラーにより発見された有名な級数である.
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