■スターリングの公式の図形的証明?(その60)
n次元正多面体は外接球と中接球,各種内接球をもつが,準正多面体は外接球と中接球をもつが,各種内接球はもたない.
頂点数がnに関して指数関数的以上の場合,外接球と中接球は準正多面体の体積をよく近似する.このことはよいとしても,ある特定の面に内接する(他の面には内接しない)内接球が多面体の体積をよく近似するのはどのようなときなのだろうか?
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[1]良近似多面体
まず,スターリングの公式
n!〜√(2πn)n^nexp(−n)
をよく近似する多面体とは何かを定義しておきたい.
(その59)では一般の場合は半径比1:n,中心対称な場合は半径比1:√nであったが,体積比に換算するとそれぞれn^n,n^n/2となって,これでは粗すぎる.厳しすぎるかもしれないが,仮にスターリングの式を1:n倍以内
√(2π/n)n^nexp(−n)<n!<√(2πn^3)n^nexp(−n)
に近似できる,特定の内接球があるものとしておく.
スターリングの公式
n! 〜 √(2πn)(n/e)^n
は面白い公式で,たとえば,
n!/n^n 〜 √(2πn)/e^n
1/n・2/n・・・(n−1)/n・n/n 〜 √(2πn)/e^n
として,全体のn乗根をとればk/nの相乗平均が大まかに1/eに近いことがわかるだろう.あるいは
1/n・2/n・・・(n−1)/n・n/n≦1/2^n-1
より,k/nの相乗平均が大まかに1/2に近いといったほうがいいかもしれない.
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[2]まとめ
空間充填2^n+2n面体は図形的証明が奏効した例であり,その意味で「良近似多面体」であったが,2(2^n−1)面体は面数は増えたものの,近似度は低下してしまった.その理由について考えてみる.
球体による多面体近似の難しさについてはいろいろ解説されている.幸い,ここで考えるn次元空間充填2(2^n−1)面体の面数は2(2^n−1)と指数関数的,頂点数は(n+1)!と階乗関数的なので,球体と較べてもいい線をいっているのではないかと思われた.
面数2(2^n−1)の空間充填多面体(置換多面体,頂点数(n+1)!)を使えばよりよい上界・下界評価が可能になるだろうと予想されたというわけである(ただし,計算はかなり面倒になるだろう).
しかし,実際に起こったのはまったく逆で,2(2^n−1)面体は面数は増えたものの,近似度は低下してしまった.ここで,n!/n^nは[1]2^n+2n面体,[2]2(2^n−1)面体の両方に入っているから,その理由は[1]には立方体の性質が遺伝し,[2]には正単体の性質が遺伝しているからだと考えることができるだろう.
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空間充填2^n+2n面体は,スターリングの公式を図形的に証明?するというとんでもない性質をもつことが判明したが,希有な例あるいは唯一の例であるかどうかはわかっていない.
逆に考えれば,空間充填2(2^n−1)面体の方が,希有な反例あるいは唯一の反例である可能性もある.(予想は肯定的に証明されれば定理となるが,予想を否定するには反例を作る必要がある.したがって,数学では反例を作ることは定理を証明することと同様に重要である.)
そもそも体積を計算できる多面体自体がごく小数なので,このこと自体が証明の対象になりうるのかわからないが,事実だけを述べると「スターリングの公式をよく近似する多面体を構成した」ということなのであろう.
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