■スターリングの公式の図形的証明?(その59)
単位球B^nのなかの凸多面体Pで,頂点数がnの多項式になっているものは,どれも球の体積を近似しないことが知られている.頂点数がnに関して指数関数的でない限り,体積近似しないのである.
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[1]楕円体による凸体の近似
1辺の長さが1の正単体の内接球,外接球の半径はそれぞれ,
1/√2n(n+1),√n/2(n+1)
で,その比は1:nである.
1辺の長さが1の立方体の内接球,外接球の半径はそれぞれ,
1,√n
で,その比は1:√nである.
したがって,凸体Kは内側と外側から相似比1:nの相似な楕円体で近似できる.中心対称な場合は相似比を1:√nに改善できる.どちらの比も最善である.一般の場合は正単体を,中心対称な場合は立方体を考えればよい.
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[2]多面体による球体近似(ミンコフスキーの第2定理)
一般に中心対称な凸体(もっと一般的に0が重心であるような凸体)Kに対して,
2^n/n!≦vol(K)≦2^n
はミンコフスキーの第2定理と呼ばれています.
すなわち,Kの体積は1辺の長さ2の立方体とそれを切断した直角三角錐の体積の中間になるというものです.
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[3]マーラーの不等式
立方体領域:K={|x1|≦1,・・・,|xn|≦1}の体積は2^n,また,正八面体領域:K~={|x1|+・・・+|xn|≦1}の体積は2^n/n!で与えられます.両者は極双対集合です.
中心対称な凸体(もっと一般的に0が重心であるような凸体)Kとその極双対集合K~に対して,マーラーの不等式
4^n/(n!)^2≦vol(K)vol(K~)≦4^n
成立します.
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[4]ブラシュケ・サンターロの不等式
ブラシュケ・サンターロの不等式は
c1^n/n!≦vol(K)vol(K~)≦c2^n/n!
というものです.
前節のマーラーの不等式は最良のものではなく,定理の上限については
vol(K)vol(K~)≦vol(B^n)^2=π^n/Γ^2(n/2+1)が成り立ちます.下限については
4^n/n!≦vol(K)vol(K~)
が予想されています(マーラー予想).
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