■スターリングの公式の図形的証明?(その54)
これまで体積公式が知られている高次元多面体は,
正単体αn,正軸体βn,超立方体γn,超球Bn
それに標準単体Δn,角錐Pyrnを加えてもよいが,形が球体からかけ離れているため球体による多面体近似の対象にはならなかった.
もちろん,高次元多面体の等積球を構成することは可能であるが,その球の幾何学的意味付け(たとえば,外接球なり内接球なりといった)については何もないのである.
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このシリーズでは,体積の計算ができ,かつ球体近似を可能ならしめるn次元切頂八面体βn(x)を構成した.βn(x)は空間充填多面体であり,その体積は,n次元切頂八面体の切頂面間距離が4/nであることから,
volβn(x)=(4/n)^n/2
また,1象限分の体積は
volΔn(x)=(2/n)^n/2
になる.3次元では切頂八面体の体積はそれに外接する立方体の半分であることはよく知られている.この性質は任意の次元についても成り立つのであるが,そのことを知っている人はたとえいたとしてもごくわずかであろう.
空間充填2^n+2n面体によるスターリングの公式の図形的近似式
n!/n^n≒2(π/8)^n〜√(2n/π)(π/8)^n
において,
n!は直角三角錐(あるいは球の体積)
n^nは立方体 (あるいは球の半径)
と関係している部分である.
一方,図形近似する立場からは天地逆転
n^n/n!
の方が使いやすい.n^n/n!は1辺の長さnの立方体を切断した直角三角錐の体積になるからである.
この空間充填多面体の面数は2^n+2nと指数関数的なので,球体と較べてもいい線をいっているのではないかと思われる.
なお,面数2(2^n−1)の空間充填多面体(置換多面体,頂点数(n+1)!)を使えばよりよい上界・下界評価が可能になるかもしれないと思われたが,そうはならなかった.
あるいは空間充填多面体ではないが面数3^n−1(頂点数2^nn!)の多面体を使えばよりよい上界・下界評価が可能になるかもしれないが,体積の計算自体がかなり面倒になり,いまだ実現できていない.
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