■パズルワールド散策(その2)

 パズルは非生産的であると思われがちだがそんなことはない.単純な問題でもその奥には複雑な数学が広がっていることはよくあることだ.それに加えて個々のパズルごとに解法を編み出す必要があるという事情は一種の知恵較べの趣きさえある.そこがパズル好きの人にはこたえられない面白さを感ずる面であろう.

 にもかかわらず,私はあまりパズルが好きな方ではない.私のように頭の悪い者にとっては難問で解けないことも多いからという勝手な理由からであるが,おおかたの人にとってもパズルはやはり迷惑至極であろうと思う.パズル好きは面白がり,おおかたの人は迷惑を感じる・・・それがパズルなのである.

 世の中に私のように物わかりの悪い者はそうたくさんはいないとは思うが,私の素朴な疑問も何らかの役に立つかもしれないので,今回のコラムでは専門家でなくともわかるパズルを取り上げることにした.図形パズルが中心であるから非専門家でも十分理解できるであろうと思う.

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【Q1】正多面体の四色問題

 正多角形は無限に多く存在しますが,それでは「互いに合同な正多角形を隙間も重なりもないように並べて平面を完全に埋める仕方が何通りあるでしょうか?」 この問題は昔から知られていて,それが3種類に限ることは以下のようにして証明されます.

 正多角形の中で平面をタイル張りのように隙間なく埋めつくすことができる平面充填形では,各頂点に正p角形がq面が会するとすると,正p角形の一つの内角は2(1−2/p)×90°であり,一つの頂点の回りの内角の和はこれがq個集まって四直角ですから,

  2q(1−2/p)=4,すなわち,

  1/p+1/q=1/2   (p,q≧3)

で,この条件を満たす(p,q)の組は(3,6),(4,4),(6,3)の3通りしかありません.したがって,平面充填形は正三角形,正方形,正六角形の3つだけです.このうち正方形のは碁盤,正六角形のは蜂の巣などでおなじみでしょう.

 2次元の平面の中に正多角形は無限に多くあるのに反して,3次元の空間には無限に多くの正多面体は存在しません.平面充填形は,面数が無限大となって全体が一面に広がってしまった正多面体と解釈することができますが,平面充填形の場合と同様にして,正多面体の各面を正p角形,各頂点にq面が会するとすると,頂点の周囲は4直角未満ですから,不等式

  2q(1−2/p)<4,すなわち,

  1/p+1/q>1/2   (p,q≧3)

  (p−2)(q−2)<4

が正多角形となる必要条件です.

 このような整数の組は(p,q)=(3,3),(3,4),(3,5),(4,3),(5,3)の5通りで,それぞれ,正4面体,正8面体,正20面体,正6面体,正12面体に対応します.すなわち,正多面体は正4・6・8・12・20面体の5種類あって5種類しかないことはプラトンの時代にはすでに見つけられていて,それらがプラトンの自然哲学で重要な役割を演ずるところから,正多面体はプラトンの立体(Platonic solid)とも呼ばれています.

 さて,コンピュータの助けを借りて証明された悪名高き定理に4色定理(1976年)があります.平面上あるいは球面上の地図については,塗り分けに4色必要というのが4色定理ですが,それでは

 (問)正多面体の塗り分けには何色必要でしょうか?

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【A2】正4面体ではどの面も互いに接していますから,塗り分けにはどうしても4色必要です.立方体では相対する面を同じ色にすれば3色で塗り分けられます.正8面体は交互に2色で塗り分けられます.正12面体は少し難しくなりますが,4色を公平に3回ずつ使って可能になります.正20面体は3色で可能です.

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【Q2】市松模様の塗りわけ

(問)3種類の平面充填形のうち,どの隣接する2面も同じ色でないように,黒と白の市松模様に塗ることができるのはどれか?

(ヒント)これが可能なためには,1つの頂点で偶数の面が交わらなければならない.すなわち,qは偶数.

(問)プラトン立体のうち,どの隣接する2面も同じ色でないように,黒と白で塗ることができるのはどれか?

(答)正八面体

 次に,三角形P(黒塗り)とそれを裏返した三角形Q(白塗り)の2つを交互に並べて,平面全体をタイル張りすることを考えます.たいていの場合は途中でタイル同士が重なってしまいますが,うまくいくと市松模様のタイル張りができあがります.

(問)Pがどのような形のとき,このようなタイル張り(平面の市松模様三角形タイル張り)が可能であろうか?

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【A2】これが可能なためには,1つの頂点で偶数個の3角形が交わらなければならないので,これを2aとおく.また,その頂点の角度をαとおくと,頂点を一回りしたので,2aα=2π.ゆえに,

  α=π/a   ただし,aは2以上の自然数.

 まったく,同様に残り2つの内角に対しても

  β=π/b,γ=π/c

 また,α+β+γ=πより

  1/a+1/b+1/c=1

 この等式を満たす(a,b,c)の組は非常に少ない.便宜上,a≧b≧cとすると

  (3,3,3) → 正三角形

  (4,4,2) → 直角二等辺三角形

  (6,3,2) → 30°,60°,90°の三角形

の3種類が得られる.

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 以上の解は平面を鏡映三角形で埋めることをユークリッド面(放物的)で考えたものですが,リーマン面(楕円的),ロバチェフスキー面(双曲的)を問題にするならば,解は非常に異なるものになります.

  α+β+γ>π,=π,<π

 すなわち

  1/a+1/b+1/c>1,=1,<1

に応じて楕円幾何学,ユークリッド幾何学,双曲幾何学の三角形が得られます.

 1/a+1/b+1/c>1を満たす正の整数の組みたす(a,b,c)は高々有限個で,(n,2,2)は正2面体群,(3,3,2)は正4面体群,(4,3,2)が正8(6)面体群,(5,3,2)は正20(12)面体群に対応しています.一方,1/a+1/b+1/c<1の場合は(n≧7,3,2),(n≧5,4,2),(n≧4,3,3),(n≧3,4,3)など無限個あり,双曲幾何学における市松模様三角形タイル張りの可能性は無限にあることになります.

 すなわち,楕円的平面では基本領域は有限個しかなく,有限個の基本領域をならべることによって全平面を埋めつくすことができます.一方,双曲的平面の場合には,無限に多くの種類の基本領域があり,全平面を隙間なく埋めるには無限個必要となります.ユークリッド平面はその中間で,基本領域は有限種類しかないが,全平面を埋めつくすには無限個必要であるというわけです.

[補]ガウスの超幾何微分方程式の2つの独立解が代数関数になるための条件と正多面体の関係はシュワルツによって発見された(1873年).シュワルツの3角形とは球面3角形の鏡映によってちょうど球面を覆いつくすことができるものである.このような3角形のうちで最も単純なものは球面をちょうど一重に覆うものである(メビウスの3角形).リーマン面とは関数を一価関数として取り扱えるように導入した複素平面であるが,代数関数となるためにはシュワルツの逆関数が一価であることが必要十分条件である(リーマン面の一意化).→コラム「超幾何関数のはなし」参照

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【Q3】鏡映三角形による平面充填

(問)1つの3角形を辺に関して次々折り返していって,3角形が互いに重なることなく,平面を埋めつくすことができるか?

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【A3】この問題も平面を鏡映三角形で埋めるというものですが,市松模様という条件がなくなっているので,1つの頂点に会する三角形は偶数に限る必要はありません.

  α=2π/p   ただし,pは3以上の自然数.

 まったく,同様に残り2つの内角に対しても

  β=2π/q,γ=2π/r

 また,α+β+γ=πより

  1/p+1/q+1/r=1/2

が成り立ちます.

 ここで,3≦p≦q≦rと仮定すると

  1/2=1/p+1/q+1/r≦3/p

より,3≦p≦6

 さらに,pが奇数のとき,頂点Aからでる2辺の長さは等しくならなければなりません.そうしないと,折り返しでうまく重ならないからです.したがって,

(i)p=3のとき,q=rなので,

  q(q−12)=0

これより,(p,q,r)=(3,12,12)

(ii)p=4のとき,(q−4)(r−4)=16

これより,(p,q,r)=(4,5,20),(4,6,12),(4,8,8)ですが,(p,q,r)=(4,5,20)は必要条件を満たすものの,十分条件を満たさない,すなわち,1点のまわりだけは完全に埋められても平面のタイル張りになりません.凸な多角形では七角以上になるとどんな型のものも平面充填はうまくいかないのです.

(iii)p=5のとき,q=rより,

  q(3q−20)=0

これを満たす3以上の整数はありません.

(iv)p=6のとき,(q−3)(r−3)=9

これより,(p,q,r)=(6,6,6)

 結局,求めるタイル張りは

  (6,6,6) → 正三角形

  (4,8,8) → 直角二等辺三角形

  (4,6,12) → 30°,60°,90°の三角形

  (3,12,12)→ 30°,30°,120°の三角形

の4通りあることになり,実際に十分条件を満たします.

 30°,30°,120°の角をもつ三角形は,正三角形格子(3,6)の各面を3個の合同な三角形に分解することによってできるモザイク模様です.「麻の葉」文様と呼ばれるくり返し文様なのですが,日本では古くから装飾工芸品や寄木細工のデザインなどとして用いられていますから,ご存じの方も多いと思います.

 30°,60°,90°のモザイクは,30°,30°,120°の三角形からなるモザイクをさらに2個の直角三角形に分解してできる模様,直角二等辺三角形モザイクは正方格子(4,4)を4分割したもの,正三角形は正三角形格子(3,6)そのものです.

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【Q4】多角形ビリヤードと周期軌道

 (問)直線Lの同じ側にある2点F1,F2からの距離の和F1P+PF2が最小になるようなL上の点Pを求めよ.

 この問題は「ヘロンの問題」と呼ばれているが「町F1から町F2に行くとき,川岸Lの点Pに立ち寄るものとする.このとき道のりの長さが最小となるような点Pを求めよ.」という実用価値のある問題であるし,反射光学の問題あるいはビリヤード問題とも考えることができる.

(答)答は簡単に求めることができる.点F2を直線Lに関して対称移動させF0とする.直線F1F0と直線Lの交点が最短距離となる折り返し点Pである.この最適な点Pには線分F1PとF2PがそれぞれLとなす角が等しいという性質がある.

 また,このことは三角形のフェルマー点Fが3つの頂点への距離の和:AF+BF+CFを最小にすること,そのためには∠AFB=∠BFC=∠CFAが成り立つこととよく類似している.このフェルマー点は頂点と外正三角形の頂点を結ぶ直線の共点として得られる.すなわち,フェルマー点を見つけるには与えられた三角形の各辺の上に正三角形を立てて各頂点と結ぶと,これら3本の線は1点Fで交わる.また,フェルマー点は3つの正三角形の外接円の交点でもある.

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 長方形のビリヤード台を考える.東西方向の壁にぶつかるときは南北方向の運動量の向きだけが逆になり,南北方向の壁にぶつかるときには東西方向の運動量の向きだけが逆になる.したがって,どんな軌道であろうと4通りの向きにしかならないのでこの運動は完全に予測可能である.

 この問題に対する基本的な考え方は,球を反射させる代わりに,ビリヤード台の鏡像を枠の外に作ってやるというものである.すなわち,軌道自体を折り曲げる代わりに衝突するたびに衝突した辺を軸にビリヤード台自身をひっくり返すのである.

 このような図形を鏡像群と呼べば,鏡像群を貫く直線がビリヤード球の軌跡に対応する.そして,この表示法のもとで長方形の互いに向かい合う辺同士をを同一視するとトーラスが得られる.トーラスの中で長方形ビリヤードの軌道は単純な直線運動で表されることになる.

 また,ある位置からある角度でビリヤードの球を発射させると,何回か壁にあたった後,最初と同じ位置・同じ角度で戻ってくる場合がある.n回壁にあった後,同じ状態に戻る場合をn周期軌道と呼ぶことにすると,与えられたnに対して発射角度を求めるというのはおなじみのビリヤード問題であろう.

 長方形ビリヤードの周期性について考えると,長方形ビリヤードが周期的となるための条件は軌道方向(tanθ)が有理数であることである(ビリヤード台の縦横比あるいはそれぞれの長さは無理数でもかなわない).軌道方向が無理数の場合,軌道は非周期的となり軌道が領域を埋めつくす.それに対し,周期軌道では軌道が領域を埋めつくすことはない.周期軌道は無数に考えられるが,非周期軌道は周期軌道より圧倒的に多数を占めるのである.

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 頂角のまわりで鏡像を貼り付けていって1周で鏡像群が元に戻るものが可積分な多角形ビリヤード系となりうる.したがって,長方形以外にも頂角がすべて2π/q(qは整数)で与えられる場合が可積分系となるのだが,頂角が(30°,60°,90°),(45°,45°,90°)の直角三角形あるいは正三角形はその例であり,可積分な三角形ビリヤードはこれですべてである.

 それに対して,頂点が1つでも2πp/q(qは偶数で,p,qは互いに素)で与えられる多角形ビリヤードは可積分系にはならない.たとえば,頂角がπ/3,2π/3の菱形ビリヤード(正三角形を2個くっつけた菱形)では頂角のまわりの鏡像群は元に戻らない.元に戻るためにはp回転しなければならず,2q枚のビリヤード台の鏡像が必要になるため(いわばらせん状に回転するのであって)軌道面はトーラスを作ることができないのである.

 可積分系とカオス系の境界に位置する力学系を擬可積分系と呼ぶのだが,頂点のうち1つでも2πp/qとなるような多角形ビリヤードがその例である.擬可積分系では,軌道面はトーラス(種数g=1)こそ構成しないものの,複数個のハンドルをもった不変曲面(g≧2個の穴の空いたドーナツ型)の上に乗っているのである.

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 頂角がすべて有理数×πで与えられるものばかりでなく,無理数×πで与えられるものを含む一般の三角形ビリヤードの周期性について考えてみよう.鋭角三角形のビリヤード台を考えると,各辺で1回ずつ反射して常に同じ軌道をぐるぐると周り続ける巡回軌道が存在する.また,三角形の内部を2回以上回って最初の点に戻るような巡回軌道は無数に考えられる.

 (問)三角形ビリヤードの最短巡回軌道を定めよ.

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【A4】三角形ビリヤードの場合,球があたる壁を中心として鏡像を貼り付けていくと,6個目の鏡像で最初の三角形を平行移動させたものが登場する.このことは任意の位置から特定の角度でビリヤードの球を発射させると6回壁にあたった後,最初と同じ位置・同じ角度で戻ってくることができることを意味している(2周期軌道).

 ちょうど1周で最初の点に戻る巡回軌道(1周期軌道)はあらゆる巡回軌道のなかで最短のものであって,三角形の各頂点から対辺に下ろした垂線の足を結ぶ垂足三角形に限られる.すなわち,垂線の足の位置から他の垂線の足の位置に向けてビリヤードの球を発射させると,3回壁にあたった後,最初と同じ位置・同じ角度で戻ってくるのである.

 三角形の内部を2回以上回って最初の点に戻るような巡回軌道でもこの軌道上の各辺はいずれも垂足三角形の辺と平行である.また,四角形ビリヤードでは,四角形が円に内接し円の中心が四角形の内部にある場合,そのような四角形の内部には巡回軌道が存在しうることが知られている.

[補]3次元ビリヤード

 それではビリヤード球が立方体の内部で各面で1回ずつ反射して,常に同じ軌道をぐるぐると周り続けることは可能だろうか? これは可能であって,スタインハウスが発見した例は各面を3×3に分割した升目の角をイス型に巡回するもの(1:2の比に対角線を分割する閉六角形)である.4つの側面の中心と底面,上面の対角線を1:3の比に分割する閉八角形も驚くほど簡単な例である.2つの軌道に共通する特徴は立方体に内接する正四面体の辺上(ケプラーの八角星)を通るということである.

 また,コンウェイは正四面体において同様の巡回軌道を発見している.それは各面の中央に正四面体の辺の1/10の長さをもつ正三角形の頂点を通るものである.

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【Q5】ダビデの星とケプラーの星

 同じ大きさの正3角形2個のうち,1個を天地逆転させ,もう1個の正3角形に重ねると,星形6角形ができます.これはダビデの星と呼ばれて,イスラエルの国旗にも使われ,ユダヤ人の象徴とされています.

 星形6角形では内側に正6角形ができますが,外側のとがった角を結んでも正6角形ができます.すなわち,星形6角形は外側を正6角形が取り囲んでいて,内側にも正6角形が入っていることがわかります.それでは,・・・

(問)同じ大きさの正4面体2個を重ねた場合,その外側と内側にはどのような立体ができるでしょうか?

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【A5】複合多面体とは,いくつかの多面体を中心がすべて一致するように重ね合わせたもので,多面体が同じくらいの大きさならば,互いに交わったり,ある面が他の面を突き抜けたりします.

 この問題はダビデの星の3次元版で,同じ大きさの正4面体2個による屋根瓦状の相貫体にはケプラーの8角星という名前がつけられています.最も簡単な複合多面体なので,これが頭の中でイメージできれば答は簡単なのですが,勘の働きにくい問題でもあります.

 上から見ても,前から見ても,横から見ても,同じ6角形に見える3次元図形を想像されますが,ところが,外側に立方体(正方形6面),内側に正8面体(正3角形8面)が正解なのです.

 小生はこの問題を「ダビデの星・ケプラーの星」と呼んでいます.「ダビデの星」では正三角形と正六角形が互いに隣接していますが,それが周期的な格子をつくったものが「カゴメ格子」です.「カゴメ格子」は,文字通り,竹篭編みにみられる篭の目の結び目を作る格子であり,日本人が最も愛好した文様のひとつです.ちなみに「カゴメ」は世界でも通用する呼び名とのことです.

 ついでに,立方体と正8面体,正12面体と正20面体の相貫体について考えてみましょう.立方体と正8面体の相貫体は,外側を菱形12面体(直交する対角線の比が1:√2の菱形12面)が,内側には立方8面体(正方形6面+正3角形8面)が入っています.正12面体と正20面体の相貫体では,外側を包む立体が菱形30面体(直交する対角線の比が黄金比になっている菱形30面),内側には12・20面体(正5角形12面+正3角形20面)という多面体が内包されているのです.(正多面体とその双対多面体との共通部分は,正8面体,立方8面体(6・8面体),12・20面体です.)

 正多面体の各面の中心(重心)を順に結んで立体を作ると,もとの正多面体と面と頂点の関係が逆向きの正多面体ができます.互いに表と裏の関係にある多面体を双対多面体といいます.正四面体ではふたたび正四面体ができ,正六面体では正八面体が,逆に正八面体では正六面体が,また,正十二面体では正二十面体が,逆に正二十面体では正十二面体ができます.したがって,正四面体は自己双対であり,正六面体と正八面体,正十二面体と正二十面体とは互いに双対です.このことにより,正多面体は,{正四面体},{正六面体と正八面体},{正十二面体と正二十面体}の3つのグループに大別することができます.

 3種類の相貫体−−正4面体と正4面体,立方体と正8面体,正12面体と正20面体−−について調べてみると,それぞれの立体の間に双対関係があり,3種類の相貫体の外側にできる立体と内側にできる立体−−立方体と正8面体,菱形12面体と立方8面体,菱形30面体と12・20面体も互いに双対関係をもっていることがわかります.そして,これらもやはり相貫体をつくることができ,そしてまたそこに現れてくる外側と内側の立体も双対関係になっています.頂点と面に関しての双対性にはうまくできているなと感嘆させられます.自然界の法則性,自然が作るきれいな関係の1例といえましょう.

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