■正20面体と正12面体の進化(その3)
多数のウィルスは正20面体の外殻をもつ.ウィルスのカプシドの構造は生物学的に重要で,ほとんどのカプソメア(ヘキサマー)は6つの別のカプソメアに,一部(ペンタマー)は別の5つのカプソメアに取り囲まれている.
しかし,これを構成する分子ユニットの数は12または20または60の倍数であることはほとんどなく,
32,42,72,92,162,252,362
などであった.すなわち,正20面体に似ているが,それよりも対称性の低い擬正20面体と考えられた.擬正20面体では
10(a^2+ab+b^2)+2
個の頂点をもった多面体ができる.
擬正20面体ではペンタマーは必ず12個でなければならないのであるが,その後,ペンタマーを12個より多くもっているウィルスが発見されたことにより,このモデルは修正を迫られることになった.
それで登場したのが,正20面体のウィルスの構造を6次元のD6格子と呼ばれる正20面体の対称性をもった格子を3次元空間に投影した形として理解することであった.
ウィルスタイリングでも,このような高次元幾何学が深遠な形で使われるようになったというわけである.
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