■多面体はDNAをもっている(その9)
今回のコラムでは,多面体から離れてDNAの塩基置換についてまとめておきます.
置換には,プリン同士もしくはピリミジン同士の間の置換である転位型置換(transition : A←→G、T←→C),および,プリンとプリミジン間の置換である転換型置換(transversion : T, C←→A,G)があります.ヒトのゲノムでは,transitionがtransversionの4~7倍多く起こっていることがわかっています.
置換の結果は四つで,
[1]同義置換(アミノ酸変化なし,最も多い)
[2]非同義置換(アミノ酸変化あり)
[3]ナンセンス変異(終止コドンの形成、翻訳終了)
[4]ナンセンスサプレッサー変異(終止コドンの解除、翻訳の再開もしくは延長)
となります.
また,SNP(Single Nucleotide Polymorphism,一塩基多型)は,ゲノム配列中の一塩基の多様性で,集団内で1%以上の頻度で見られ,ある程度進化的に固定した状況と考えることができます.
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アミノ酸()20種類よりも3文字コード(64種類)の方が種類が多いので,いくつかのアミノ酸は必然的に何種類かの3文字コードが割り当てられる.たとえば,フェニルアラニン(F)を表す3文字コードは2種類だが,ロイシン(L),セリン(S),アルギニン(R)を表す3文字コードは6種類もあり,冗長である.たとえば,TCT,TCC,TCA,TCGはすべてセリン(S)をコードしているので,3文字目は何も情報を含んでいないことになる(暗号としては余分である).
繰り返しになるが,TCT,TCC,TCA,TCGはすべてセリン(S)をコードしているので,3文字目が変化してもアミノ酸はセリンのままである.一方,ただひとつの3文字コードで指定されるアミノ酸は2つだけである.ひとつはATGで指定されるメチオニン(M)で,もう一つはTGGで指定されるトリプトファン(W)である.
このように20種類のアミノ酸と3文字コードの対応表は,生物にとっては元素の周期律表以上に重要なものになっているのであるが,例外的な3文字コード,
ATG,
TGA,TAA,TAG
はアミノ酸と対応しているのではなく,翻訳の開始と停止をコードする.(ATGは遺伝子の最初にあれば翻訳開始,途中にあればメチオニンをコードする.TGA,TAA,TAGは翻訳停止をコードする.)
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