■多面体的組み合わせ論(その8)

 0/1多面体はすべての頂点の座標が0か1である多面体である.別の言い方をすると単位立方体の頂点の部分集合の凸包である.3次元の場合,正四面体や正八面体の1/6にあたる標準単体,「九章算術」にある塹堵(ぜんと:1/2立方体),陽馬(1/3立方体),鼈臑(べつどう:1/6立方体)も0/1多面体である.

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[1]立方体の切断によって得られる空間充填立体−−−九章算術の幾何(角錐台の体積公式)−−−

 魏の時代に書かれた劉徽の「九章算術」の体積計算では棋(き)と呼ばれる4種類のブロックを利用して,角錐や角錐台の体積公式を得ている.4種類のブロックとは立方体,塹堵(ぜんと:1/2立方体),陽馬(1/3立方体),鼈臑(べつどう:1/6立方体)である.鼈臑とはすっぽんのすね(前足の骨)の意であるそうだ.

 たとえば,正四角台は中央にある立方体,側面にある4つの塹堵,各隅に1つずつある4つの陽馬に細分される.それらをうまく組み換えることによって,3個の三角錐(V=a^2h/3,abh/3,b^2h/3)に転化させることができる.このことは角錐台の体積公式が

  (a^2+ab+b^2)h/3

となることを示している直接的な証明法である.

 劉徽の「九章算術」では,台形の面積公式

  (a+b)h/2

が台形を2個の三角形(S=ah/2,bh/2)に転化させて得られるのと同様のアイディアで角錐台の体積を求めているのである.すなわち,「九章算術」の立方体,塹堵(ぜんと),陽馬,鼈臑(べつどう)はピースを並べ替えて等積変形により立体の体積を求積するもので,同じく中国生まれの「タングラム」の立体版と考えられる.

 なお,鼈臑(テトラドロン)はペンタドロン2原子を凧型面で接合させた2原子分子σ2であるが,それ自体を1個の原子とみなすこともできる.σ2にはいくつかの空間充填異性体が存在することになる.

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[2]整数多面体(格子多面体)

 0/1多面体を一般化したものが整数多面体(頂点の座標が整数)である.

 任意の単純多面体あるいは単体的多面体に対して,頂点の座標がすべて整数であるものが存在するか? このことはd≦3の場合,すべての多面体に対して成り立つが一般には成り立たない.

 正軸体系の(1,・・・,1,0)は単純多面体で,その座標は,

  (0,±1,±2,・・・,±n−1)

の置換2^n-1・n!個であることがわかる.たとえば,n=4の場合,

  (0,±1,±2,,±3)→192個

 単純多面体であるから,辺数はn/2・2^n-1・n!,ファセット数は3^n−1−2^(n-1)nと準正多面体である.

[Q]これ以外に整数多面体となる準多面体は存在するだろうか?

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