■多面体的組み合わせ論(その3)

 多面体的組み合わせ論(polyhedral combinatorics)の話題をいくつか.

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[1]置換多面体

 置換多面体は順列多面体(permutahedron)とも呼ばれる.3次元置換多面体は4文字あるいはベクトル(1,2,3,4)の座標の置換として可能な24個のベクトルの凸包とみなすことができる.この多面体の辺が結ぶ2点は互換による入れ替わりだけの違いしかない.

 より詳細に調べると,置換多面体の構造と置換の性質の間の関係が他にも見つかっていく.

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[2]巡回多面体

 f0=nとする.次元がd=2のとき,多角形はf0=f1=n,f2=1である.d=3のとき,

  f1≦3n−6,f2≦2n−4

等号が成り立つのは単体的多面体(すべての面が三角形)のときに限られる.

 d=2,3では面の数はnに対して線形であったが,d=4ですべての頂点が変で結ばれている単体を考えると,辺の数は(n,2)となって,多項式的である.dとnが与えられたとき,巡回多面体と呼ばれる多面体が面数最大のなることが知られている.ファセット数の最大値のオーダーはn^[d/2]である.

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[3]整数多面体

 整数多面体(integral polytope)あるいは格子多面体(lattice polytope)とはすべての頂点がZ^nにあるような多面体.

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[4]巡回セールスマン多面体

 置換行列が完全2部グラフKn,nと対応するのに対して,巡回セールスマン多面体は完全グラフKnに対応している.

 この多面体は(n−1)!/2個の頂点をもつnC2−n=n(n−3)/2次元の多面体である.

 ところで,n次元正単体は(n+1)個の点からなる完全グラフとみなすことができ,k次元胞の数はfk=(n+1,k+1)である.完全グラフKnは正n角形にすべての対角線を引くことと同じであって,n個の点からなり,k次元胞の数はfk=(n,k+1)である.

 したがって,巡回セールスマン多面体はn−1次元単体とは明らかに異なるものである.巡回セールスマン多面体(TSP多面体)とは,完全グラフKnのことではなく,n点の凸包のことであって,ミンコフスキーの定理がいっていることは,TSPが線形計画法として正確にモデル化できるという事実にほかならない.そして,TSP多面体のファセットは半空間を表す不等式によって面取りされるのである.

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