■素数がもたらしたもの(その26)
Σ(1,∞)k^mlogkから発散するnのべき乗項を引いた残りを定数と考えると,偶数次元では
−ζ’(−s)
奇数次元では
定数−ζ’(−s)
の形となりましたが,この定数について,大阪の花本先生より興味深い結果を教えていただきました.
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【1】グレイシャー(Glaisher)の定数の一般化について
Σ(1,∞)k^mlogkから発散するnのべき乗項を引いた残りを定数と考えて,一般化Glaysher数をAm,ベルヌーイ数をBn,調和関数Hn=1+1/2+1/3+・・・+1/nとすれば,
Am=B(m+1)Hm/(m+1)-ζ’(-m)
が成り立つというものです.
たとえば,
[1]m=1のとき
Σklogk〜(n^2/2+n/2+1/12)・logn-n^2/4+C
C=1/4-1/720+1/5040-1/10080+・・・
となりましたが,
B2=1/6,H1=1,m+1=2
ですから,
C=1/12−ζ’(−1)=A1
[2]m=3のとき
Σk^3logk〜(n^4/4+n^3/2+n^2/4-1/120)・logn-n^4/16+n^2/12+C
C=1/16-1/12+1/120-1/5040+1/33600-・・・
となりましたが,
B4=−1/30,H3=1+1/2+1/3=11/6,m+1=4
定数Cは
C=−11/720−ζ’(−3)=A3
[3]m=2nのとき
ベルヌーイ数の奇数項は第一項以外は0ですから,
Am=−ζ’(−m)
で与えられるというものです.
(文献)Polygamma Functions of negative order
Victor S.Adamchic 1998
JOURNAL OF COMPUTATIONAL AND APPLIED MATHEMATICS
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【2】まとめ
mが小さいとき,偶数次元では
−ζ’(−m)
奇数次元では
定数−ζ’(−m)
は確認できておりましたが,mが大きくなったときもこのように表されるかについては何ともいえません.しかし,このことは正しいことがわかりました.大きな進展です.
なお,リーマン予想の3つの同値な言い換えとして,
[1]コッホの結果(1901年)より,リーマン予想=「nとn+k√nの間に素数はある」ですが,
π(x)=Li(x)+O(x^1/2logx)
|π(x)−Li(x)|≦C・x^1/2logx
Li(x)=∫(2,x)dt/logt
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[2]ラガリアスの同値条件(2002年)
nの約数の和をσ(n)で表すと,リーマン予想は
σ(n)≦Hn+logHnexpHn
がn≧1に対して成立すると等価です.
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[3]ロバンの同値条件(1984年)
オイラーの定数γを用いると,リーマン予想は
σ(n)<expγnloglogn
がn>5040に対して成立すると等価です.
[2][3]は初等的な条件になっていて,さらに
Am=B(m+1)Hm/(m+1)-ζ’(-m)
にも調和級数のn次部分和
Hn =1/1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/n
が関わっているのを見ると,リーマン予想との関係が想起されます.
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