■銀河の構造

 フラクタル幾何学の父と呼ばれるマンデルブロは,星々がフラクタル的に凸凹に配列されている宇宙モデルを提唱した.もしそうならオルバースのパラドックスはビックバン理論なしでも解決できるからである.

 ユークリッド幾何学が宇宙の滑らかさを表しているのに対して,フラクタル幾何学は宇宙のデコボコをよく表しているといわれる所以である.

 [参]アン・ルーニー「数学は歴史をどう変えてきたか」東京書籍

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【1】相似変換(スケール変換)

 定点Oを中心として図形を拡大縮小すると,辺の長さは変わってしまいますが,対応する辺の長さの比や角の大きさは変わらないという変換を考えることができます.このような操作を相似変換あるいは尺度変換といいます.

 尺度変換によって不変な形として,「フラクタル」という概念があります.フラクタルとは,有限の空間に無限の集合がたたみこまれたもので,ロシアのマトリョウシカ人形のように相似形が入れ子構造になっていて,拡大すると自己相似パターンが認められるものを指します.いくらでも小さいスケールで自分自身を再現するパターン,いたるところで微分不可能な連続曲線といったほうがわかりやすいかもしれません.

 部分を拡大すると,またそこに全体図と同じ図形が入っている自己相似性をもっている図形がフラクタル図形なのですが,フラクタル構造の代表例が,ガラスのひび割れ,線香花火の火花の形,雪の結晶,金平糖の角の造形成長パターンなどです.フラクタル構造を解明することによって,たとえば,木のような構造をもつ気管支の形態と機能の生物学的発達が説明できたり,また,銀河は宇宙上に一様に生ずるのではなく,むしろクラスターとして存在していますが,宇宙のフラクタル構造の解明がその起源の理解に導いてくれます.

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