■オルバースのパラドックス

 メンガーのスポンジには,素晴らしいパラドックスが潜んでいる.細分が進むにつれて,メンガーのスポンジの体積はどんどん小さくなるが,表面積は際限なく増え続ける.すなわち,メンガーのスポンジは果てしなく大きな表面積をもちながら目には見えない物体ということになる.

===================================

 一方,オルバースのパラドックス(1823年)とは,恒星が一様に配列されているならば,どの方向を見ても必ず恒星があるわけで,夜空は明るくなければならないのに,実際は暗いというものである.(最初にそのことに気づいたのはケプラーだった.)

 フラクタル幾何学の父と呼ばれるマンデルブロは,星々がフラクタル的に凸凹に配列されている宇宙モデルを提唱した.もしそうならオルバースのパラドックスはビックバン理論なしでも解決できるからである.

 ユークリッド幾何学が宇宙の滑らかさを表しているのに対して,フラクタル幾何学は宇宙のデコボコをよく表しているといわれる所以である.

 [参]アン・ルーニー「数学は歴史をどう変えてきたか」東京書籍

===================================