■トーラスもどき上の円(その4)

 2010年の形の学会の展示コーナーでは,円の向きを水平に保ったまま鉛直面内で円運動させたときの軌跡(観覧車の床の運動)として現れる4次曲面を,手嶋吉法先生(当時・産総研)が3Dプリンタで製作した模型の断面に2本の線分が見てとれた.非特異4次曲面には直線は一本も載らないはずであるが,線分が載っているのであれば特異4次曲面なのであろう.

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 手嶋 吉法先生(千葉工業大学 工学部 機械サイエンス学科)より,「トーラスもどき」に関する情報を教えて頂いたので紹介したい.

  [参]手嶋 吉法「空間を味わい、形を造る」

数学文化 (Journal of Mathematical Culture), 14 巻 1号 51頁〜62頁、日本数学協会 編,発刊日:2010.07

[1]当該の4次曲面(観覧車の床板の運動)は「ボヘミアンドーム」と命名されている.

[2]ボヘミアンドームの形は「円の円運動の軌跡」として理解できるが,円の半径=円運動の半径の場合の立体模型を作成した.もちろん,円の半径<円運動の半径,円の半径>円運動の半径の模型も造れるが,まだ作っていない.

[3]円の半径(r)と円運動の半径(d)の大小関係がr<d, r=d, r>d のいずれの場合も曲面の自己交差(特異点あり)が生じるので,ボヘミアンドームは特異曲面である.(他方,トーラスに関しては,r<dでは曲面の自己交差が生じませんので「リングトーラスには特異点がない」と言える.

[4]ボヘミアンドームの全体模型の外観「写真提供:手嶋吉法(千葉工業大学)」

[5]ボヘミアンドームを様々な切り口で切った切断模型.この切断面に「直交する2本の線分」がみえる.「写真提供:手嶋吉法(千葉工業大学)」

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