■初等物理の問題(その6)
(その5)のシュタイナーの平行軸定理は質点系の重心の関する定理であるが,数学的にはスチュアートの定理そのものでもある.
この定理は物理学の問題や確率論の問題に応用されている.たとえば,ベクトルpkを位置ベクトルとみれば慣性モーメントの問題となるし,速度ベクトルとみれば運動エネルギーの問題に転化する.全分散を群間分散と群内分散に分解すると考えれば「分散分析」の問題となるのである.
===================================
多角形の各頂点に重みwkを設ける.たとえば三角形の場合,重心は
OG↑=(w1OA↑+w2OB↑+w3OC↑)/(w1+w2+w3)矢
ここで,始点をOからPに変えても
PG↑=(w1PA↑+w2PB↑+w3PC↑)/(w1+w2+w3)
となって,重心の位置は座標や原点の取り方に依存しないことがわかる.また,始点をGに変えると,
w1GA↑+w2GB↑+w3GC↑=0↑
となる.
ここでは1次モーメントを考えたが,2次モーメントについては,
w1|OA↑|^2+w2|OB↑|^2+w3|OC↑|^2
=w1|OG↑+GA↑|^2+w2|OG↑+GB↑|^2+w3|OG↑+GC↑|^2
=(w1+w2+w3)|OG↑1^2+2OG↑・(w1GA↑+w2GB↑+w3GC↑)+w1|GA↑1^2+w2|GB↑1^2+w3|GC↑1^2
ここで,
w1GA↑+w2GB↑+w3GC↑=0↑
より,
w1|OA↑|^2+w2|OB↑|^2+w3|OC↑|^2
=(w1+w2+w3)|OG↑1^2+w1|GA↑1^2+w2|GB↑1^2+w3|GC↑1^2
すなわち,点Oに関する2次モーメントの和は,点Oに関する重心Gの2次モーメントと重心Gに関する2次モーメントの和に等しいというのがシュタイナーの定理である.
これは数学的にはスチュアートの定理そのものでもある.
n|AB↑|^2+m|AC↑|^2=n|GB↑|^2+m|GC↑|^2+(m+n)|GA↑|^2
物理的には
1次モーメント=運動量保存の法則
2次モーメント=角運動量保存の法則(あるいはエネルギー保存の法則)
に相当する.
===================================