■組み合わせ・重複組み合わせの母関数(その4)
(その3)を補足したい.
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【1】シェフェ数
k群の多重比較の場合,対比する組み合わせ数はフィッシャー法で1,ダネット法でk−1,チューキー法で kC2 =k(k−1)/2,シェフェ法ではさらに多くの作り方があります.
たとえば,5群の平均値(μ1 ,μ2 ,μ3 ,μ4 ,μ5 )のシェフェ型多重比較を考える場合,μ3 −μ4 のような1対1の対比(対比較)に限ってもk(k−1)/2通りあり,場合によっては(μ1 ,μ3 ,μ5 ),(μ2 ,μ4 )という2群に分けて対比する(線形比較)ことが必要になることもあるでしょう.(μ1 +μ3 +μ5 )/3−(μ2 +μ4 )/2という対比は,(μ1 ,μ3 ,μ5 )群と(μ2 ,μ4 )群の平均値の平均との比較と解釈できますが,すべての対比というと(μ1 +3μ3 +μ5 )−(0.5μ2 +4.5μ4 )のような意味付け不明のものまで無限に含まれるので,ここでは実際面からいって意味のある対比に絞ってその組み合わせをすべて数えあげて
みます.
線形比較において任意の平均値の線型結合をθ=c1 μ1 +c2 μ2 +・・・+ck μk ,比較される群の決定は重み係数ci で行なうことにして,比較する一方の群の重み係数に1/(合併する群の数),他の群に−1/(合併する群の数),残りに0を当てると,重み係数は対比較および任意の群を合併した後の群間比較に対応した意味合いをもってきます(たとえば,3群の多重比較において第1群と第3群を比較するならc1 =1,c2 =0,c3 =−1,第1群と第2群を併合し第3群と比較するならc1 =1/2,c2 =1/2,c3 =−1とすると対比較も線形比較も統一的に扱うことができる).
k群の対比較に限ってみるとその組み合わせ方は kC2 通りになりますが,線形比較まで多重比較を拡張するとその組み合わせ方が何通りになるかを直感的に勘案することは簡単ではありません. 1対1の対比を行なう場合,前者の選び方は kC1 通り,後者の選び方は前者を除いたk−1群から1群を抽出するので k-1C1 通り,前者と後者の順序は考えないわけですから,1対1の対比の作り方は kC1 × k-1C1 /2(= kC2 )通りあります. 同様にして,1対2の対比数は kC1 × k-1C2 通りになりますが,これは( kC1 × k-1C2 + kC2 × k-2C1 )/2すなわち順序を考慮したうえで1対2の対比と2対1の対比を加えそれを半分にしたものと等値です. 以上の考え方を演繹していくと,任意の組み合わせで対比する場合のすべての対比数は下表の数値を足して2で割った値になることがわかります.
1 2 k−2 k−1
1 kC1×k-1C1 kC1×k-1C2 ・ kC1×k-1Ck-2 kC1×k-1Ck-1
2 kC2×k-2C1 kC2×k-2C2 ・ kC2×k-2Ck-2 −
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k−2 kCk-2×2C1 kCk-2×2C2 − −
k−1 kCk-1×1C1 − − −
1行目の合計は kC1 ×( k-1C1 + k-1C2 +・・・+ k-1Ck-2 + k-1Ck-1 )= kC1 ×(2k-1 −1),同様に2行目は kC2 ×(2k-2 −1),k−1行目は kCk-1 ×(21 −1)とまとめられますから,すべての行の結果を総合した最終的な対比数は{ kC1 ×(2k-1 −1)+ kC2 ×(2k-2 −1)+・・・+ kCk-1 ×(21 −1)}/2通りになります. kC1 = kCk-1 , kC2 = kCk-2 ,・・・を利用するとこの式をさらに整理することができます.
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【2】シェフェ数(再考)
前節で調べた方法はあまり感心できるものではありません.包除原理を用いることにしましょう.
[1]A,B,Cへの割り付け全体 3^n
[2]Aを除いてB,Cに割り付ける 2^n
[3]Bを除いてA,Cに割り付ける 2^n
[4]Cだけに割り付ける,すなわち[2+3]の共通部分 1
シェフェ数は前者と後者の順序は考えないわけですから,これらを足して2で割った値になることがわかります.
(3^n−2・2^n+1)/2!=3^n-1/2−2^n+1/2
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【3】第2種スターリング数(nS3の場合)
[1]A,B,Cへの割り付け全体 3^n
[2]Aを除いてB,Cに割り付ける 2^n
[3]Bを除いてA,Cに割り付ける 2^n
[4]Cを除いてA,Bに割り付ける 2^n
[5]Aだけに割り付ける 1
[6]Bだけに割り付ける 1
[7]Cだけに割り付ける 1
(3^n−3・2^n+3)/3!=3^n-1/2−2^n-1+1/2
包除原理を用いると,一般項は
nSk=1/k!Σ(−1)^k-jkCjj^n
となることがわかります.
nS2=2^n-1−1
nS3=3^n-1/2−2^n-1+1/2
nS4=4^n-1/6−3^n-1/2+2^n-2−1/6
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