■組み合わせ・重複組み合わせの母関数(その2)

 カタラン数の一般項は

  Cn=2nCn/(n+1)=(2n)!/n!(n+1)!,

  Cn=2n+1Cn/(2n+1)

あるいは

  Cn=2nCn−2nCn-1=1,2,5,14,42,・・・

と表される.

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【1】オイラーの問題

 凸多角形(n+2角形)に対角線を描いて,それをいくつかの凸多角形に分けるのではなく,対角線を互いに交わらないように引いて三角形分割する問題を考えよう.

[Q]凸n+2角形に互いに交わらないn−1本の対角線を引いて三角形分割する仕方の数c(n)は?

[A]この問題はオイラーが提起した幾何学問題である(オイラーの問題).4角形では2通り,5角形では5通りあることは数えられても,6角形ではそう簡単にはいかない(6角形に対しては14通りある).

 6角形の場合,たとえばある対角線を引いて3角形と5角形,4角形と4角形,5角形と3角形に分割することができるが,そのような分割の仕方を場合分けすることで,積和型の漸化式

  c(n+1)=c(0)c(n)+c(1)c(n−1)+・・・+c(n)c(0)

が得られる.ただし,c(0)=c(1)=1とする.

 これはカタラン数の漸化式であって,カタラン数c(n)はnの増加に応じて急激に増加する.

  c(0)=1,c(1)=1,c(2)=2,c(3)=5,

  c(4)=14,c(5)=42,c(6)=132,

  c(7)=429,c(8)=1430,c(9)=4862,・・・

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 カタラン数の一般項は

  c(n)=2nCn/(n+1)=(2n)!/(n+1)!n!

であるが,この公式は母関数を用いると簡明に得ることができる.

 カタラン数の母関数を

  C(x)=c(0)+c(1)x+c(2)x^2+・・・+c(n)x^n+・・・

とおく.これを2乗すると

  C(x)^2=c(0)c(0)+(c(0)c(1)+c(1)c(0))x+ (c(0)c(2)+c(1)c(1)+c(2)c(0))x^2+・・・

 ここで,

  c(0)c(0)=c(1)

  c(0)c(1)+c(1)c(0)=c(2)

  c(0)c(2)+c(1)c(1)+c(2)c(0)=c(3)

であるから,

  C(x)^2=c(1)+c(2)x+ c(3)x^2+・・・

次数を揃えるために,両辺にxをかけて

  xC(x)^2=c(1)x+c(2)x^2+ c(3)x^3+・・・

  xC(x)^2=C(x)−c(0)=C(x)−1

 C(x)に関する2次方程式を解いて,母関数は

  C(x)={1−(1−4x)^1/2}/2x

ここでニュートンの二項展開により,一般項

  c(n)=2nCn/(n+1)=(2n)!/(n+1)!n!

が得られる.

 なお,凸n角形を対角線で三角形分割する仕方は何通りあるかという問題は,回転や反転で同型になるものを同じと数えると,

  1,1,1,3,4,12,27,82,228,733,2282,7528,・・・

となることを付記しておく.

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【2】カタラン数

 カタラン数

  {Cn}={1,2,5,14,42,132,429,1430,4862,16796,・・・}

は,凸n角形を対角線で三角形分割する仕方は何通りあるかとか,n対のかみ合い括弧の種類数などいろいろな場面で登場する数なのですが,

  Cn=2nCn/(n+1)=(2n)!/n!(n+1)!,

  Cn=2n+1Cn/(2n+1),

あるいは

  Cn=2nCn−2nCn-1=1,2,5,14,42,・・・

と表されます.

 カタラン数から一般項が何かを予想するのは難しいのですが,ここでは

  Cn=2nCn/(n+1)   (C0=1)

がわかっているものとして,母関数

  F(t)=ΣCnt^n

を求めてみます.

 この級数は,第0項:C0=1から始まるので,そのまま項比をとると

  an+1xn+1/anxn=(n+1/2)(n+1)/(n+2)*4x/(n+1)

したがって,

  F(x)=2F1(1/2,1,2,4x)=2/{1+(1-4x)^(1/2)}

      ={1-(1-4x)^(1/2)}/2x

  (1-4x)^(1/2)=Σ(-4)^k1/2Ck・x^k

より

  Cn=-1/2(-4)^(n+1)1/2C(n+1)

これをさらに式変形すれば,

  Cn=2nCn/(n+1)

になる.この結果,二項展開を丹念に使えば

  {1-(1-4x)^(1/2)}/2x=Σ2nCnx^n/(n+1)

が得られるはず・・・.

 この方法は試してはいないのですが,かなり面倒そうです.実はカタラン数に対しては,漸化式

  Cn=ΣCkCn-k-1=C0Cn-1+C1Cn-2+・・・+Cn-1C0

が成り立つので,母関数は

  F(t)=ΣCnt^n=ΣCkt^kΣCn-k-1t^n-k+1

      =F(t)・tF(t)+1

すなわち,

  tF(t)^2−F(t)−1=0

なる2次方程式を満たすことが知られています.

 C0=1を満足させなければならないので,複号は負号をとると,

  F(t)={1-(1-4x)^(1/2)}/2x

がでてきます.

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【3】カタラン数の漸近挙動

  Cn=2nCn/(n+1)=(2n)!/n!(n+1)!

という数列と2^nという数列の増加の仕方を比較してみるために,比

  Cn/2^n

をとると,n→∞のときCn/2^n→∞となってしまうことがわかります.

  Cn=2nCn/(n+1)=(2n)!/(n!)^2(n+1)

に対して,スターリングの漸近公式

  k!=√2π・k^(k+1/2)・exp(−k)=√(2πk)・(k/e)^k

を適用すると,

  Cn〜2^2n/√(nπ)(n+1)〜4^nn^(-3/2)/√π

  Cn/4^nn^(-3/2)→1/√π

に収束することがわかる.

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