■トーラス面上の円(その5)
トーラス面
{(x^2+y^2)^1/2−r1}^2+z^2=r0^2
r0:パイプの半径,r1:輪の半径
の経線と緯線は円です.もちろん,赤道も円ですが,その他にも円が存在するそうです.
気づきにくいことですが,原点を通り,xy平面となす角度が
sinα=r0/r1
の平面による切り口も円(ヴィラソーの円)になります.この平面はドーナツ面の内側をかすめるように通ります.とてもきれいな結果です.
カッシーニ(1625-1712)は17世紀の偉大な天文学者であったが,ヴィラソー(1813-1883)も19世紀の天文学者.
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[1]トーラス面のパラメータ表示
{(x^2+y^2)^1/2−r1}^2+z^2=r0^2
は,
x=(r0cos+r1)cost
y=(r0cos+r1)sint
z=r0sins
と表せるそうです.
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[2]球面のパラメータ表示
同様のことを球面で行うと,3次元空間の直角座標(x,y,z)←→球面座標(r,θ,φ)の座標変換は
x=rsinθcosφ
y=rsinθsinφ
z=rcosφ
ヤコビアンはD(x,y,z)/D(r,θ,φ)=r^2sinθ
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[3]高次元への一般化
n次元球(B^n)の表面(S^n-1)は
x1=rcosθ1
x2=rsinθ1cosθ2
x3=rsinθ1sinθ2cosθ3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
xn-1=rsinθ1sinθ2・・・sinθn-2cosθn-1
xn=rsinθ1sinθ2・・・sinθn-2sinθn-1
と表すことができる(ただし,n=2のときは,周知のとおり,x1=rcosθ1,x2=rsinθ1とする).
(r,θ1,θ2,・・・,θn-1)がn次元極座標である。そのときヤコビアンD(x1,・・・,xn)/D(r,θ1,・・・,θn-1)は
r^(n-1)sin^(n-2)θ1sin^(n-3)θ2・・・sin^2θn-3sinθn-2
となる.
トーラス面も高次元に一般化するできそうである.それに対して擬球面はどうだろうか?
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[4]定曲率曲面(球と擬球)
世界の曲がり具合を表す量が曲率なのですが,曲がった世界の性質を調べる学問をリーマン幾何学と呼びます.ガウス曲率は,その後,曲面の内在的量としてリーマン幾何学発展の基礎となりました.
ガウス曲率が一定である曲面を定曲率曲面といいます.平面,柱面はガウス曲率が0,半径aの球面のガウス曲率は1/a^2です.ガウス曲率が一定な曲面はたくさん存在しますが,コンパクトなものは球面だけです.
また,球面はガウス曲率が正の回転面ですが,球面以外にもガウス曲率が正の定曲率回転面が存在します.一方,負の定曲率回転面としては追跡線:
x=a(logtan|θ/2|+cosθ),y=asinθ
を回転してできる擬球面がありますが,擬球面以外にもガウス曲率が負の定曲率回転面が存在します.→前掲書参照
伸び縮みしないひもの両端を固定しぶら下げてできる曲線を懸垂線(カテナリー)といいますが,カテナリーの伸開線が,トラクトリックス(追跡線)であって,追跡線上の点とその点での接線がx軸と交わる点との距離aは常に一定です.この性質が追跡線というこの曲線の名前の由来で,ある長さのひもの先に石を結びつけて引っ張りながらx軸上を歩くと,石は常に引く人の方向に向かって進みますから,石の通る軌跡が追跡線になります.石を犬に置き換えると,追跡線は犬の散歩をするときの曲線ですから,別名,犬線あるいは犬曲線とも呼ばれています.
擬球は追跡線をx軸のまわりに回転して得られる回転体で,2つのラッパを広い方の口のところで張り合わせたような格好になっていて,交わるところで滑らかでありません.また,x軸の±方向に無限に伸びている部分がありますから,非コンパクトです.球とは似ても似つかないのですが,擬球という名前はどこから来ているのでしょうか?
追跡線の方程式:
x=a(logtan|θ/2|+cosθ),y=asinθ
と,原点を中心とする半径aの円の方程式:
x=acosθ,y=asinθ
を比べてみましょう.x座標のalogtan|θ/2|が異なるだけです.ですから,両者にはかなり似ている性質があるのではないかと思われます.実際,以下の対応関係をみると,非常に似た関係にあることがわかります.
トラクトリックス 円
回転体は擬球 ←→ 回転体は球
回転体の断面積(πa^2) ←→ 円の面積(πa^2)
回転体の表面積(4πa^2) ←→ 球の表面積(4πa^2)
回転体の体積(4/3πa^3) ←→ 球の体積(4/3πa^3)
回転体の曲率(−1/a^2) ←→ 球のガウス曲率(1/a^2)
追跡線をx軸(漸近線)のまわりに回転すると,ガウス曲率が負で一定の曲面(擬球面)ができます.定数aをその擬半径といいますが,このように球と比較してみると,名前の由来がうなづけます.
擬球面はガウス曲率が−1/a^2(負)の定曲率回転面ですが,ところで,曲面上の2点を結ぶ最短の線を直線とみなせば,驚いたことに,この擬球面上の幾何学はユークリッド幾何学の平行線の公理を「直線外の1点を通り,その直線に平行な直線は無数に存在する」によって取り替えて導かれる双曲的非ユークリッド幾何学と同じになります.双曲的非ユークリッド幾何学はボヤイとロバチェフスキーがそれぞれ独立に,しかも同じ時期に発見したもので,擬球面は,非ユークリッド幾何を3次元ユークリッド空間内の曲面として実現させている曲面なのです.
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