■ドーナツ面(円環面)の性質
ドーナツ面
{(x^2+y^2)^1/2−r1}^2+z^2=r0^2
は環状に並べられた円と考えることができ,経線と緯線は円です.
r0:パイプの半径,r1:輪の半径
その体積はパップス・ギュルダンの定理より,円の面積×円周の長さで与えられる.
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【1】パップス・ギュルダンの定理
半径aと半径b(b<a)の同心円に挟まれた円環状部分の面積は
πa^2−πb^2
で与えられるが,この図形は2次元の円に幅をもたせたものと考えることができる.
そこで,帯の幅(a−b)に重心(原点からの距離:(a+b)/2)が描く円周長2π(a+b)/2を乗ずると
円周長×幅=2π(a+b)/2×(a−b)=πa^2−πb^2
となって同じ値が得られる.
円を円と交わらない軸を中心にして3次元空間内で回転させるとトーラス(円環面)が得られる. 半径bの円を3次元空間内で半径aで回転させたトーラスの場合,
表面積=円周長2πb×円周長2πa=4π^2ab
体積=断面積πb^2×円周長2πa=2π^2ab^2
で表すことができる.すなわち,体積・表面積とも太さと長さの積で表せるというわけである.
円周率が2つ入っているが,この意味はトーラス面は環状に並べられた円であることにほかならない.トーラスの体積・表面積の解答を自力で見つけて感動を覚え,それが次の興味に繋がったという経験をお持ちの読者も少なくないだろう.トーラスを同心円の積層であることを自力でみつける姿勢は必要であろうし,わかるということの喜びを体験することができるのである.
(第1定理)回転体の体積は元になる図形の面積とその図形の重心が移動した距離の積になる.
(第2定理)表面積は図形の周となっている曲線の重心の移動距離とその図形の周長との積になる.
これらは円だけでなくあらゆる回転体について成り立つ回転体の体積と表面積に関する定理であり,4世紀前半に精力的に活動した数学者パップスにちなんで「パップスの定理」と呼ばれている.
(Q1)三角形の重心は底辺から高さの1/3のところにあるが,それでは半円の重心はどこにあるのだろうか?
(A1)パップスの第1定理を逆に使って求めてみよう.直径を軸として半円を回転させると球になる.アルキメデスによれば球の体積は
4/3πr^3
一方,パップスによればこの体積は半円の面積1/2πr^2と半円が回転したときの重心の移動距離2πdの積に等しい(重心と円の中心との距離をdとする).したがって,
d=4r/3π=0.42r
(Q2)半径rの半円形をした針金の重心は?
(A2)パップスの第2定理より,重心の移動距離2πdと半円の長さπrの積は球の表面積4πr^2は等しくなる.したがって
d=2r/π=0.64r
これらの問題は積分を使っても解くことができるが,それよりもパップスの定理を使った方が簡単であろう.また,パップスの定理は円が曲線に沿って移動するような軌跡問題などにも応用することができる.
[補]この回転体の体積や表面積についての定理は古代ギリシアの数学者パップス(4世紀前半)が言及し,後になってスイスの数学者ギュルダンによって証明が試みられました.そのため今日ではパップス・ギュルダンの定理と呼ばれています.
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【2】ホテリング・ワイルの定理(管状近傍定理)
パップス・ギュルダンの定理は一般のn+1次元空間内の曲線ついても成立する.すなわち,半径rのn次元円板を考えることによって,
管状r近傍の体積=半径rのn次元円板の体積×曲線の長さ
一般に,Sをn次元空間におけるj次元単体とすると,Sの直交r近傍Srは,Sと半径rのn−r次球の直積としても書くことができる.
voln(Sr)=volj(S)r^n-j×voln-j(Bn-j)
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【3】カッシーニ曲線
2定点(−a,0),(a,0)からの距離の和が一定となる点の軌跡は楕円,差が一定の点の軌跡は双曲線です.また,商が一定の点は円(アポロニウスの円)を描きます.それでは積が一定の点はどのよう軌跡を描くでしょうか.
(答)はカッシーニ曲線.
{(x+a)^2 +y^2 }{(x−a)^2 +y^2 }=c^2
(x^2 +y^2 )^2 −2a^2 (x^2 −y^2 )=c^2 −a^4
r^4 −2a^2 r^2 cos2θ+a^4 =c^2
2次の多項式f(x,y)=0,すなわち楕円,放物線,双曲線が円錐を平面で切断したときの切り口として現れたように,カッシーニ曲線はトーラス(ドーナツ)の平面による切断面として現れることが知られています.
とくに,定数cが2定点間の距離の半分aの2乗に等しいとき,レムニスケート(双葉曲線)と呼ばれます.レムニスケートは8の字形(8を90°回転した形)をしていて,その直交座標系での方程式は4次曲線(x^2 +y^2 )^2 =2a^2 (x^2 −y^2 ),極座標系ではr^2 =2a^2 cos2θとなります.ここで,2定点を(−1/√2,0),(1/√2,0)と定めると,レムニスケートの方程式は極座標で書くとr^2 =cos2θ,直交座標で書くと(x^2 +y^2 )^2 =x^2 −y^2 となります.
レムニスケートには円に共通する性質があり,定規とコンパスだけで奇数のn等分することができる必要十分条件はnがフェルマー素数(n=22^m+1の形の素数:3,5,17,257,65537)であることです.
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【4】ヴィラソーの円
ドーナツ面の経線と緯線は円ですが,その他にも円が存在します.気づきにくいことですが,原点を通り,xy平面となす角度が
sinα=r0/r1
の平面による切り口も円(ヴィラソーの円)になります.この平面はドーナツ面の内側をかすめるように通ります.
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【5】サイクライド
r1/r0比が大きいとドーナツはフラフープのようになりますが,比が1に近づくと孔は狭まり,r1/r0<1になると互いに自分自身の中に食い込んだ形になり,ヘソの付いたアンパンのような形になります.
もっといびつな形も考えることができますが,デュパンは大きさを変えながら空間を移動する球の包絡面を考えて,サイクライドをを構成しました.
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