■円の循環定理(その5)
[1]シュタイナーの定理
小円を大円の内部におき,この2つの円の中間に次々に接する円列を作る.たいていの場合,最後の円は重なってしまい,この円列は互いに接する円環をなさない.しかしときとして完全な円環をなす場合がある.このとき,最初の円をどこに選ぼうとも完全な円環をなす.
シュタイナーの定理は最初の2円が同心円になるような反転を考えると容易に証明できる.メビウス変換
w=(az+b)/(cz+d)
は円を円に変換する.(この変換は円は円に移り,直線も円へ移るという性質を併せもつ.)
1=(a+b)/(c+d)
−1=(−a+b)/(−c+d)
α=b/d
を解くと
w=(z+α)/(αz+1)
は半径1の円板をそれ自身に移し,[−1,0,1]はそれぞれ[−1,α,1]に移されることがわかる.(円板の中心が円板の中心に移されるわけではない).
[0,i,−i]を[1,−1,0]に移す変換は
w=−(z+i)/(3z−i)
メビウス変換
w=(z+α)/(αz+1)
の逆変換は
z=(−w+α)/(αw−1)
であるが,一般には
w=(az+b)/(cz+d)
の逆変換は
z=(dw−b)/(−cw+a)
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[2]シュタイナーの円
少しだけ補足しておきたい.
1次分数変換(メビウス変換)
w=f(z)=(az+b)/(cz+d)
は複素数球面上で考えると1つの回転に対応していて,たとえば,数zを
(z−1)/(z+1)
に置き換えるには,北極と南極が赤道のところにくるように球を90°回転させればよい.この写像は等角写像になる.
この変換の不動点は
z=(az+b)/(cz+d)
これは2次方程式だから一般には2根をもつ.c=0のとき不動点のひとつは∞である.不動点がひとつの重なってしまうための条件は
D=(a−d)^2+4bc=0
である.
もし,ad−bc=1と正規化されているとすると
D=(a−d)^2+4bc=(a+d)^2−4=0
D>0で,相異なる2根a,bをもつときは
(w−a)/(w−b)=k(z−a)/(z−b)
という形に書ける(a,bで決まるシュタイナーの円).
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[3]直交する円族
x軸上の2定点を通る円族を考える.その中心は軸を共有し同軸(y軸)上にある.次に,これらすべての円に直交する円族(交点における接線が直交する円族)を構成することができる.その中心は軸を共有し同軸(x軸)上にある.後者の円族同士は互いに交わらない.
この2つの円族は反転によって得られる.→「メビウス変換とシュタイナーの定理」参照
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