■ワイソフ計量空間(その20)

 これまで,3つの重要なクラスとして

[1]空間充填2^n+2n胞体

[2]空間充填2(2^n−1)胞体

[3]3^n−1胞体

を取り上げたが,重要でないクラスとして,点Qの座標が等差数列をなす切頂切稜正軸体

[4]3^n−1−2^(n-1)n胞体

[5]複雑多面体

について再考してみたい.

===================================

[4]3^n−1−2^(n-1)n胞体

 正軸体系の(1,・・・,1,0)の座標は,

  (0,±1,±2,・・・,±n−1)

の置換2^n-1・n!個である.たとえば,n=4の場合,

  (0,±1,±2,,±3)→192個

単純多面体で辺数はn/2・2^n-1・n!,ファセット数は3^n−1−2^(n-1)nとなる.

 それに対して,置換多面体とは,正単体系の(1,・・・1,1)で,その座標は(n+1)!,単純多面体で辺数はn/2・(n+1)!,ファセット数は2(2^n−1)である.

 正軸体系の(1,・・・,1,0)は置換多面体としばしば誤解されるが,平行多面体とも混同されているようだ.

n   3^n−1−2^(n-1)n   2(2^n−1)

2      4            6

3     14           14

4     48           30

5    152           62

6    536          126

であって,正軸体系の(1,・・・,1,0)は2次元・3次元では空間充填図形であるが,4次元以上ではそうはならない.

===================================

[5]複雑多面体

 複雑多面体の形状ベクトルは,

[a]nが奇数のとき(n=2k+1)

  [0,・・,0,1,0,・・,0]

[b]nが偶数のとき(n=2k)

  [0,・・,0,1,0,0,・・,0]

で,後者は正軸体の基本単体の頂点Pn/2-1(超立方体の基本単体の頂点Pn/2)を通る超平面で切稜した図形,前者は正軸体の基本単体の頂点P(n-1)/2(超立方体の基本単体の頂点P(n-1)/2+1)を通る超平面で切稜した図形.

 切稜図形であるから,そのファセット数は

  2^n+2n    (正軸体系)

  2(n+1)   (正単体系)

となる.一方,次数を求めてみると

[a]nが奇数のとき(n=2k+1)

   m=2k(k+1)=(n^2−1)/2        (正軸体系)

   m=k(k+1)+(k+1)=(n+1)^2/4   (正単体系)

[b]nが偶数のとき(n=2k)

   m=2k^2=n^2/2                (正軸体系)

   m=k^2+k=n(n+1)/4           (正単体系)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 空間充填2^n+2n胞体は

3次元の場合,形状ベクトル[1,1,0]:m=3

4次元の場合,形状ベクトル(0,1,0,0):m=8

5次元の場合,形状ベクトル(0,1,1,0,0):m=6

で,その形状ベクトルは

[a]nが奇数のとき(n=2k+1)

  [0,・・,0,1,1,0,0,・・,0]

[b]nが偶数のとき(n=2k)

  [0,・・,0,1,0,0,・・,0]

になる.

 後者は正軸体の基本単体の頂点Pn/2-1(超立方体の基本単体の頂点Pn/2)を通る超平面で切領した図形,前者は正軸体の基本単体の頂点P(n-1)/2とP(n+1)/2の間(超立方体の基本単体の頂点P(n-1)/2+1とP(n+1)/2+1の間)を通る超平面で切領した図形.

 その次数を求めてみると

[a]nが奇数のとき(n=2k+1)

   m=3k=3(n−1)/2        (正軸体系)

[b]nが偶数のとき(n=2k)

   m=2k^2=n^2/2           (正軸体系)

 2(2^n−1)胞体と3^n−1胞体は単純多面体であるが,空間充填2^n+2n胞体は単純多面体の逆の「複雑多面体」になっているだろうか?→偶数次元の空間充填2^n+2n胞体は複雑多面体であるが,奇数次元では一般に複雑多面体にはならない.

===================================