■リーマン予想の先に何がある(その4)

 2012年8月,望月新一先生(京都大学)がabc予想の証明をしたとのニュースが流れた.abc予想とは方程式a+b=cをみたす互いに素な自然数a,b,cについて,cを積abcの素因子成分によって上から抑えるという不等式予想である.これが成立するとフェルマー・ワイルズの定理やモーデル・ファルティングスの定理の簡単に証明(別証)することができるという.ところで,・・・

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[1]フェルマー・ワイルズの定理の類似物

 フェルマー・ワイルズの定理『x^n+y^n=z^nでn≧3のとき,x,y,zは正の整数解をもたない』をご存じの方は多いだろう.

 ところで,多項式に対するフェルマー・ワイルズの定理の類似

『方程式x(t)^n+y(t)^n=z(t)^nでn≧3のとき,定数でない互いに素なx(t),y(t),z(t)は存在しない』も成り立つ.しかもそれは19世紀には知られていたようである.(リュービル,1879年)

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[2]アルティンの原始根予想

  πa(x)/π(x)〜Cx/(logx)

すなわち,aを原始根にもつ素数は無限個存在するという予想は,一般化されたリーマン予想を仮定すれば成立することがわかっています(Hooley,1967).また,アルティンの原始根予想の関数体版はすでに証明されています.

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[3]リーマン予想

 驚かれるかもしれないが,リーマン予想は合同ゼータ関数に限ればすでに証明されている.abc予想やアルティンの原始根予想もその関数体版に限ればすでに証明されている.

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[4]1元体F1上の絶対数学

 多項式に対するこれらの定理の類似はわかったが,それでは整数に関する定理の類似はどうなるのだろう? この代数幾何学と数論の相互転化がどのような形になるのかを知る人はたとえいたとしても非常に少ないと思われるが,これらは何を意味しているのであろうか?

 関数体版(多項式版)はすでに証明されているが,整数版は未証明であることから,整数も多項式の一部だと思えば(思うことができれば)すでに証明されていることになる.絶対数学とは,整数と多項式の類似を究極まで追いつめたものということなのである.

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