■リーマン予想の先に何がある(その3)

  [参]黒川信重「リーマン予想の先へ」東京図書

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【1】リーマン予想の3つの同値な言い換え

[1]コッホの結果(1901年)より,リーマン予想=「nとn+k√nの間に素数はある」ですが,

  π(x)=Li(x)+O(x^1/2logx)

  |π(x)−Li(x)|≦C・x^1/2logx

  Li(x)=∫(2,x)dt/logt

 Li(x)は対数積分関数と呼ばれますが,π(x)をx/logxで近似するより,対数積分を用いたLi(x)の近似はさらに適切な素数分布の近似式になっています.

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[2]ラガリアスの同値条件(2002年)

 nの約数の和をσ(n)で表し,調和級数のn次部分和を

  Hn =1/1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/n

と定義します.(n>1ならばHn は整数にはなりません.)

 このとき,リーマン予想は

  σ(n)≦Hn+logHnexpHn

がn≧1に対して成立すると等価です.

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[3]ロバンの同値条件(1984年)

 nを無限大にしたとき,調和級数

  H∞= 1/1+1/2+1/3+1/4+・・・

は発散しますが,そのn次部分和Hnは離散的な世界で連続関数lnnに対応するものであり,自然対数は双曲線y=1/xの下の面積として定義できます.

 したがって,双曲線y=1/xを上と下から棒グラフではさんで近似することにより,lognとlogn+1の間に押し込まれまれることがわかります(∵∫1/xdx=logx).

 したがって,Hn とlognの比{Hn /logn}は

  Hn /logn→1   (n→∞)

です.

 一方,Hn とlognの差{Hn −logn}は確定した極限値γに収束します.

 Hn −logn→γ   (n→∞:Hn =logn+γ+O(1/n))

             (n→∞:Hn =logn+γ+o(1))

 この極限値はオイラーの定数γとして知られており,約0.57722になります.オイラーの定数の比較的よい近似値は4/7で,さらによい近似値は41/71で与えられます.

 オイラーの定数γを用いると,リーマン予想は

  σ(n)<expγnloglogn

がn>5040に対して成立すると等価です.

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【2】雑感

 [2][3]は初等的な条件になっていて,リーマン予想に挑戦するならばこのルートからでしょう.

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