■n次元の立方体と直角三角錐(その355)

 石井源久先生の学位論文

  「多次元半正多胞体のソリッドモデリングに関する研究」

では,形状ベクトルv(ワイソフ構成と同じ0−1ベクトル)と変換行列Tを掛け合わせて,すべての頂点の座標を計算している.

 v=TT’v0

は方程式を解くのと同じことをやっているのであるが,どうしたらこのような発想が生まれるのか,そこに一番関心した.対角行列T‘が出てきた理由について,石井先生に訊いてみた.

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 初めのうちは,原多胞体の頂点,辺の中点,面の中心点,...を並べた行列Tに,1か0で表されるベクトルv0をかけることで,頂点の座標が出てくると都合がいいな,と考えていました.

 が,実際にやってみたら,対称性はそれでよかったのですが,辺の長さが等しくなりませんでした.そこで,辺の長さを等しくするために,ベクトルv0の値に調整用の数値を掛け算して,つじつまを合わせようと考えました.

 しかし,それではTとv0がせっかくシンプルな形で書けると思っていたのに,そのシンプルさが損なわれてしまいます.そこで,対角行列T’を使って,vの長さ調節の代わりにしようと考えました.

 対角行列T’の成分を記す式は,最初はけっこう説明を要するような状態だったのですが,当時仲の良かった友人にそれを見せたところ「これは,もっとシンプルに書ける表記法がきっとありますよ」と言われまして,行列の記法ルールを復習した結果,現在の形になりました.

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 v=TT’v0はコンピュータ計算向きの方法ではありますが,幾何学的な背景を理解するには不向きで,別の観点からの考察が必要になります.  (佐藤郁郎)

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