■書ききれなかった数の話(その51)
【1】ラマヌジャンのゼータ関数(1916年)
1916年,ラマヌジャンは,ラマヌジャン関数
Δ(z)=qΠ(1−q^n)^24=Στ(n)q^n
q=exp(2πiz)
に対するゼータ関数について考え,ある予想をたてました.
ラマヌジャン数のゼータ,すなわち,
L(s)=Στ(n)n^(-s)
とおくと(オイラー積のアナローグ)
L(s)=Π{1-τ(p)p^(-s)+p^(11-2s)}^(-1)
が成り立つことを予想したのです.
歴史上最初のゼータであるオイラー積
ζ(s)=Σn^(-s)=Π(1−p^(-s))^(-1)
は積の中身がp^(-s)の1次式であり,本質的には1次のゼータでしたが,L関数では,p^(-1)の1次式から2次式に進化しているのです.ラマヌジャン数のゼータは,歴史上最初の2次のゼータといえるのですが,新種のゼータに関するこの予想は,翌年,モーデルによって証明されました(1917年).
また,τ(p)はpが増加するとき,急激に増加するのですが,1974年,ドリーニュによって,ラマヌジャン予想,
|τ(p)|<2p^(11/2)
が証明されています.この式はp^(-s)=xとおいた2次式
1-τ(p)x+p^11x^2
の虚根条件(判別式:τ(p)^2-4p^11<0)となっていることに注意して下さい.
===================================
ラマヌジャンは,
Δ(z)=η(z)^24=qΠ(1-q^n)^24=Στ(n)q^n
zは虚部が正の複素数で,q=exp(2πiz)
η(z)はデデキントのイータ関数,η(z)=q^(1/24)Π(1-q^n)
を考え,そのフーリエ係数τ(n)を計算しました.
τ(1)=1,τ(2)=-24,τ(3)=252,τ(4)=-1472,τ(5)=4830,τ(6)=-6048,
τ(7)=-16744,τ(8)=84480,τ(9)=-113643,τ(10)=-115920,
τ(11)=534612,τ(12)=-370944,・・・
無限積をベキ級数に展開した式(フーリエ展開)が登場しましたが,このΔ(z)は,重さ12の保型形式
Δ(az+b/cz+d)=(cz+d)^12Δ(z)
と呼ばれるものになっていて,オイラーの五角数公式の拡張(24乗版)と考えられます.
ad−bc=1すなわちすべてのSL(2,Z)に対して成立しますが,とくに
[0,−1]
[1, 0]
に対する保型性
Δ(-1/z)=(z)^12Δ(z)
が成り立ちます.
===================================