■書ききれなかった数の話(その50)
素数が無限に存在すること・√2が無理数であることは,ギリシア数学のなかでも有名な定理です.それぞれユークリッドとピタゴラスが背理法を用いて証明していますが,その証明はだれしもが容易に理解できるものです.同様に,調和級数Σ(1/n)が無限大に発散すること
1/1+1/2+1/3+・・・=∞
も容易に示すことができます.
それでは,素数の逆数の和
Σ(1/p)=1/2+1/3+1/5+1/7+1/11+・・・
は有限でしょうか?
(証明)
調和級数1/1+1/2+1/3+・・・は,オイラー積表示すると
Π(1−1/p)^-1
と書けますから,
Π(1−1/p)^-1〜∞.
また,
logΠ(1−1/p)=Σlog(1−1/p)
1/pが非常に小さいとき,マクローリン展開より,
Σlog(1−1/p)〜−Σ(1/p)
ですから,
Σ(1/p)=∞
になります.したがって,すべての素数の逆数の和は発散することが示されます.
1737年,オイラーは素数の逆数の和が無限大になることを見つけました.このことから,素数が無限個あることはかんたんにわかります.また,調和級数Σ(1/n)は発散し,また,オイラー級数Σ(1/n^2)=π^2/6で収束しますから,素数は平方数ほどまばらには分布していないこともわかります.
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【1】オイラーのゼータ関数(1737年)
1737年,オイラーは2つのゼータ関数を導入した.
[1]ζ(s)=Π(1−p^-s)^-1
=(1−2^-s)^-1・(1−3^-s)^-1・(1−5^-s)^-1・(1−7^-s)^-1・・・・
=1+2^-s+3^-s+4^-s+5^-s+・・・
[2]L(s)=Π(1−(−1)^(p-1)/2p^-s)^-1
=(1+3^-s)^-1・(1−5^-s)^-1・(1+7^-s)^-1・・・
=1−3^-s+5^-s+7^-s−9^-s+・・・
=Σ(4n+1)^ーs−Σ(4n+3)^ーs
オイラーはオイラー積の対数をとることによって
Σ(1/p)=∞
奇素数の逆数の交代和
Σ(−1)^(p-1)/2/p=1/3−1/5+1/7−1/11+・・・→有限値に収束
することを証明した.
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