■素数定理とベルトラン・チェビシェフの定理(その7)

 1845年にフランスの数学者ベルトランは任意の数nと2nの間には少なくとも一つの素数pが存在する(n<p≦2n),同じことですが素数pの次の素数は2pより小さい(pk+1 <2pk )という予想を立てました.

 また,素数定理

  π(x)〜x/logx

より,もっとよい近似では

  lnx−3/2<x/π(x)<lnx−1/2

  x/(lnx−3/2)<π(x)<x/(lnx−1/2)

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【1】nと2nの間に素数がある

 n<p≦2nの間には常に1個の素数がある(1845年のベルトラン仮説を1850年,チェビシェフが証明した)ことを直接,素数定理から漸近表現を求めると

  π(2x)−π(x)〜2x/ln(2x)−x/ln(x)

 〜2x/(lnx+ln2)−x/lnx

 〜(2xlnx−x(lnx+ln2))/lnx(lnx+ln2)

 〜(xlnx−xln2))/(lnx)^2(1+ln2/lnx)

 〜(x/lnx−xln2/(lnx)^2)(1−ln2/lnx)

 〜x/lnx−2xln2/(lnx)^2

となる.

 あるいは同じことであるが,各素数はその前の素数の2倍より小さい.

  pk+1<2pk

n番目の素数は

  pn〜nln(n)

であるから,漸近的に2nとn^2の間に位置する.したがって,素数は偶数よりは少ないが平方数よりは多い.

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【2】nとknの間に素数がある

 nと2nの間に素数がある・・・.実はチェビシェフはもっと狭い範囲の中にも必ず素数が存在することを証明したのですが,1911年,イタリアの数学者ボノリスがnと3n/2の間にある素数の個数の近似式を導いたことが知られています.

 直接,素数定理から漸近表現を求めると

  π(3x/2)−π(x)〜3x/2ln(3x/2)−x/ln(x)

 〜x/2lnx−3xln(3/2)/2(lnx)^2

一方,

  π(2x)−π(x)〜2x/ln(2x)−x/ln(x)

 〜x/lnx−2xln2/(lnx)^2

であるから,約半分ということになる.

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 一般化しておきたい.

  π(kx)−π(x)〜kx/ln(kx)−x/ln(x)

 〜lx/(lnx+lnk)−x/lnx

 〜(kxlnx−x(lnx+lnk))/lnx(lnx+lnk)

 〜((k−1)xlnx−xlnk))/(lnx)^2(1+lnk/lnx)

 〜((k−1)x/lnx−xlnk/(lnx)^2)(1−lnk/lnx)

 〜(k−1)x/lnx−kxlnk/(lnx)^2

 したがって,その平均値は

  {π(kx)−π(x)}/(k−1)x〜1/lnx−klnk/(k−1)(lnx)^2

  {π(kx)−π(x)}/(k−1)x〜1/lnx

となり,素数定理は再生性を有していることがわかる(klnk/(k−1)(lnx)^2を除いて,素数定理にほぼ等しくなる).

 なお,

  π(x)=x/lnx

として,平均値の定理を適用すると

  π’(x)=(lnx−1)/(lnx)^2

より,1<θ<kとして

  (lnθx−1)/(lnθx)^2=kx/lnkx−x/lnx

  (kx/lnkx−x/1nx)(lnθx)^2=lnθx−1

(意味があるかどうかは別にして)lnθxに関する2次方程式を解くことになる.

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