■書ききれなかった数の話(その45)
θ(t)=Σexp(−πm^2t)
はテータ関数ですが,ここでは無限級数
Σ(n=1,∞)exp(−n^2t),an=exp(−n^2t)
を考えます.
ダランベールの比判定法ではなく,コーシーの根判定法を用いると
n√an=exp(−nt)
したがって,
[1]t>0のとき,n√an=exp(−nt)<exp(−t)<1→収束
[2]t<0のとき,n√an=exp(−nt)>exp(−t)>1→発散
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
もちろん,この結果はダランベールの比判定法の結果と一致します.ダランベールの比判定法では
an+1/an=exp(−(2n+1)t)
したがって,
[1]t>0のとき,an+1/an=exp(−(2n+1)t)<exp(−t)<1→収束
[2]t<0のとき,an+1/an=exp(−(2n+1)t)>exp(−t)>1→発散
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【1】絶対収束・条件収束
Σanの絶対値級数Σ|an|が収束するとき,Σanは絶対収束するという.また,Σanは収束するが,Σ|an|は収束しない級数は,条件収束するという.
さて,級数
1/1−1/2+1/3−1/4+・・・
は調和級数
1/1+1/2+1/3+1/4+・・・→ +∞
の交代級数である.この値は対数関数のマクローリン展開
log(1+x)=x−1/2x2 +1/3x3 −1/4x4 +・・・
においてx=1とおくとlog2に収束することがわかる.この値はメルカトールの定数とかグレゴリーの定数と呼ばれている定数である.
ところで,交代級数では,元の級数の項の順番を変えると収束値が変動してしまう.たとえば,負項を正項に変えて,あとでその2倍を引くと,
1/1−1/2+1/3−1/4+・・・
=(1/1+1/2+1/3+1/4+・・・)−2(1/2+1/4+1/6+1/8+・・・)
=(1/1+1/2+1/3+1/4+・・・)−(1/1+1/2+1/3+1/4+・・・)
=0
また,この交代級数は奇数の逆数と偶数の逆数に−1をかけたものからできているが,足し合わせる順序が違う級数,たとえば,負の項が2つの連続する正の項をはさんで現れる級数:
{1/1+1/3−1/2}+{1/5+1/7−1/4}+・・・
では3/2log2に収束する.また,正の項に引き続いて負の項が2つの連続する級数:
{1/1−1/2−1/4}+{1/3−1/6−1/8}+・・・
は1/2log2に収束することがわかっている.
(証明)
{1/1−1/2−1/4}+{1/3−1/6−1/8}+・・・
=1/2log2を示す.
与えられた級数は
Σ{1/(2n−1)−1/2(2n−1)−1/(2(2n−1)+2)}
=Σ{1/(4n−2)−1/4n}
一方,1/1−1/2+1/3−1/4+・・・=log2より
1/2log2=1/2−1/4+1/6−1/8+・・・
=(1/2−1/4)+(1/6−1/8)+・・・
=Σ{1/(4n−2)−1/4n}
これらは無限のパラドックスの一つの例である.有限級数ならば,足し算の順序に入れ替えは自由にできるが,無限級数となると話はまったく違ってくる.正の項と負の項がいずれも絶対収束するとき,級数の和の順番は勝手に変えてもよいのであるが,そうでない場合は,足す順序によっては級数の和が異なってくる.実は,条件収束級数の場合,級数の項の順番を適当に変えるとどんな値にでも収束させることができることが知られている.
定理(1):絶対収束級数は項の順序をどのように変えても絶対収束し,和も変わらない.(ディリクレ)
定理(2):条件収束級数は項の順序を適当に変えれば,指定された値(±∞でもよい)を和にもつようにも,振動するようにもできる.(リーマン)
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グレゴリー・ライプニッツ級数
1/1−1/3+1/5−1/7+1/9−1/11+・・・
も交代級数であり,収束してその値はπ/4になりますが,正の項だけを集めて作った級数
1/1+1/5+1/9+1/13+・・・
は収束せず無限大に発散します.
1/1+1/5+1/9+1/13+・・・
>1/4+1/8+1/12+1/16+・・・
=1/4(1/1+1/2+1/3+1/4+・・・)→∞
より発散は明らかです.負の項だけを集めても同様です.したがって,級数の和の順番は変えてはなりません.
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