■高次合成数24(その9)

 (その8)では,ポリログ関数を導入しました.

  Σ1/n^2{exp(2πn)}=polylog(2,exp(-2π))=L2(exp(-2π))

  Σ1/n^3{exp(2πn)}=polylog(3,exp(-2π))=L3(exp(-2π))

 ポリログ関数は

  ジログ関数:L2(x)=Σx^n/n^2=-∫(0,x)log(1-t)/tdt

  Ln+1(x)=∫(0,x)Ln(t)/tdt

で定義される関数ですが,

  トリログ関数:L3(x)=Σx^3/n^3,

  テトラログ関数:L4(x)=Σx^4/n^4,

  ペンタログ関数:L5(x)=Σx^5/n^5,

などを総称してポリログ関数と呼びます.

 特に,ジログ関数:

  L2(x)=Σx^n/n^2=-∫(0,x)log(1-t)/tdt

はアーベル(・ロジャース・スペンス)の関数とも呼ばれ,

  L2(1)=ζ(2)=π^2/6

となります.

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【1】オイラー積分

 オイラーはいろいろな工夫をして,

  log(sinx)=-Σcos(2nx)/n-log2

であることをつきとめ,広義積分

  ∫(0,π/2)log(sinx)dx=-π/2log2

の値を求めています.

 また,これを代入して計算すれば

  1/1^3+1/3^3+1/5^3+・・・=π^2/4log2+2∫(0,π/2)xlog(sinx)dx

  ζ(3)=2π^2/7log2+16/7∫(0,π/2)xlog(sinx)dx

が得られます(1772年).

 このとき,

  1+1/3^3+1/5^3+1/7^3+・・・

の値が必要になりますが,この値はζ(3)=Σ1/n^3 から次のようにして求まります.

  1+1/2^3+1/3^3+1/4^3+・・・

 =(1+1/2^3+1/4^3+・・・)(1+1/3^3+1/5^3+・・・)

 =1/(1−1/8)・(1+1/3^3+1/5^3+・・・)

より,分母を奇数のベキ乗だけにすると一般式は

  {1-2^(ーs)}ζ(s)

 さらに,

  1/1^s−1/2^s+1/3^s−1/4^s+・・・

 =2(1/1^s+1/3^s+1/5^s+1/7^s+・・・)−(1/1^s+1/2^s+1/3^s+1/4^s+・・・)

より,+,−が交互に出現すると一般式

  {1-2^(1ーs)}ζ(s)

を得ることができます.

 オイラーによる

  ζ(3)=2π^2/7log2+16/7∫(0,π/2)xlog(sinx)dx

という結果(log2の有理式×π^2)から,ζ(2n+1)は有理数と円周率から四則演算によって得られる数ではないだろうと予想されていますが,証明されてはいません.また,log2を含むであろうと推測されています.

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【2】ゼータとポリログ関数

  ζ(3)=2π^2/7log2+16/7∫(0,π/2)xlog(sinx)dx

の∫(0,π/2)xlog(sinx)dxはログサイン積分とも呼ぶべきものですが,ここで,ポリログ関数(polylogarithm)を導入することにしましょう.

 ポリログ関数は

  ジログ関数(アーベル・ロジャース・スペンス関数):L2(x)=Σx^n/n^2=-∫(0,x)log(1-t)/tdt

  Ln+1(x)=∫(0,x)Ln(t)/tdt

のように積分で定義される関数(積分関数)ですが,

  トリログ関数:L3(x)=Σx^3/n^3,

  テトラログ関数:L4(x)=Σx^4/n^4,

  ペンタログ関数:L5(x)=Σx^5/n^5,

  ・・・・・・・

などを総称してポリログ関数と呼びます.

 特に

  Ln(1)=(-1)^(n-1)/(n-1)!∫(0,1){log(t)}^(n-1)/(1-t)dt

   =ζ(n)

より,Ln(1)はゼータ関数の特殊値となります.

 ポリログ関数の公式を用いると,オイラーの等式

  ζ(3)=2π^2/7log2+16/7∫(0,π/2)xlog(sinx)dx

に相同な等式

  L3(1)=ζ(3)=5/4L3(φ^(-2))+2π^2/15logφ-2/3(logφ)^3

         φ=(1+√5)/2

を得ることができます.

 また,一連のログサイン積分

  ∫(0,π/3){log(2sin(θ/2))}^2dθ=17π^3/108

  ∫(0,π/3)θ(log(2sin(θ/2)))^2dθ=17π^4/6480

も得られますが,ここで,

  1/2Σ1/n^4(2n,n)=∫(0,π/3)θ{log(2sin(θ/2))}^2dθ

であることが示してみましょう.

(証明)

  2(arcsin(x))^2=Σ(2x)^2n/n^2(2n,n)

より,

  Σ1/n^4(2n,n)=∫(0,1/2){∫(0,u)(arcsin(x))^2dx/x}du/u

ここで,右辺に部分積分を2回繰り返すことによって

  Σ1/n^4(2n,n)=2∫(0,π/3)θ{log(2sin(θ/2))}^2dθ

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 ζ(4)の積分表示は,ログサイン積分

  ζ(4)=17/18∫(0,π/3)θ{log(2sin(θ/2))}^2dθ

であることが得られましたが,それではζ(3)の積分表示はどうなるのでしょうか?

  2(arcsin(x))^2=Σ(2x)^2n/n^2(2n,n)

などの公式については,コラム「超幾何関数とゼータ関数」を参照して頂きたいのですが,x→−iyとおくと

  2(arcsinh(y))^2=Σ(-1)^(n-1)(2y)^2n/n^2(2n,n)

が得られます.

 したがって,

  Σ(-1)^(n-1)/n^3(2n,n)=4∫(0,1/2)(arcsinh(y))^2/ydy

となるのですが,右辺に部分積分を施すことで,

  Σ(-1)^(n-1)/n^3(2n,n)=-2∫(0,logφ^2)xlog(2sinh(x/2))dx

 このように,ログシンハー積分となるのですが,ここで,

  L3(1)=ζ(3)=5/4L3(φ^(-2))+2π^2/15logφ-2/3(logφ)^3

の結果を利用すると,

  ζ(3)=Σ(-1)^(n-1)/n^3(2n,n)

を導くことができます.

 以上のことより,ζ(3)の積分表示は,ログシンハー積分

  ζ(3)=10∫(0,1/2)(arcsinht)^2/tdt=10∫(0,logφ)t^2cothtdt

   =-5∫(0,logφ^2)xlog(2sinh(x/2))dx

で与えられることが理解されます.

 結局,ポリログ関数の理論ではζ(2),ζ(3),ζ(4)だけが

  ζ(k)=R*Σ1/n^k(2n,n),ζ(k)=R*Σ(-1)^(n-1)/n^k(2n,n)

で表されることが確かめられているのですが,最後に,交代級数でない場合の結果

  Σ1/n^3(2n,n)=4∫(0,1/2)(arcsin(y))^2/ydy

   =-2∫(0,π/3)xlog(2sin(x/2))dx

も掲げておきます.

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