■書ききれなかった数の話(その38)
[参]佐久間一浩「高校数学と大学数学の接点」日本評論社
によると,無理数性の問題には以下のような例題もあるようです.
[Q]nを3で割り切れない正の整数とする.このとき3次方程式x^3−3nx+1=0の解はすべて無理数であることを示せ.
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[A]
f(x)=x^3−3nx+1
f’(x)=3x^2−3n=3(x^2−n)
(もしnが負の整数とするとf’(x)>0となり,f(x)はひとつの実数かいと2つの虚数解をもつため,題意を満たさない)
f’(x)=0→x=±√n
f(√n)・f(−√n)=(1−2n√n)(1+2n√n)<0
→f(x)=0は異なる3実数解をもつ.
f(x)=0が有理数解x=p/qをもつと仮定すると
q^3−3np^2q+p^3=0
(p+q)^3=3np^2q+3pq(p+q)
右辺が3の倍数なので,p+qも3も倍数.p,qは互いに素であるから,
(p,q)=(3k+1,3s+2),(3k+2,3s+1)
(p,q)=(3k+1,3s+2)のとき,
(p+q)^3=3np^2q+3pq(p+q)
→9(k+s+1)^3=n(3k+1)^2(3s+2)+3(3k+1)(3s+1)(k+s+1)
→n(3k+1)^2(3s+2)は3の倍数でないので,矛盾.
(p,q)=(3k+2,3s+1)のとき,
→9(k+s+1)^3=n(3k+2)^2(3s+1)+3(3k+2)(3s+2)(k+s+1)
→n(3k+2)^2(3s+1)は3の倍数でないので,矛盾.
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上記の問題はnが3の倍数でも同じ結論が成り立つそうです.
[Q]nを正の整数とする.このとき3次方程式x^3−3nx+1=0の解はすべて無理数であることを示せ.
[A]f(x)=0は異なる3実数解をもつことは変わらない.また,整数係数のn次方程式
x^n+a1x^n-1+・・・+an-1x+an=0
が有理数解αをもつならば,αは整数でanの約数であることが知られている.
3次方程式x^3−3nx+1=0に対して,これを適用するとα=±1となるが,このとき,n=0,1/3である.したがって,解がすべて無理数となるためには,少なくともn≠0,1/3である.よって,題意を満たすのはn≧1の整数である(nは正整数なので,α=±1のどちらも起こり得ない).
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