■書ききれなかった数の話(その36)
京都大学の入試問題(2006年)に
[Q]tan1°は有理数か? 無理数か?
という問題が出題されているそうである.
背理法で証明する,正接の加法定理
tan(x+y)=(tanx+tany)/(1−tanx・tany)
において,tanxとtanyの両者が有理数ならばtan(x+y)も有理数である.
tan1°が有理数と仮定すると,tan2°も有理数である.tan2°が有理数と仮定すると,tan3°も有理数である.この操作を繰り返すとtan30°も有理数となるが,実際は無理数であるから矛盾する.(もちろん,tan60°も有理数となるから矛盾であるとしてもよい.)→コラム「tan1°は有理数か?」参照
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tan1°が無理数であることは加法定理を使って示すことができましたが,sin1°が無理数であることの証明は格段と難しくなります.
(その21)で取り上げた問題
[Q]sin1°は有理数か? 無理数か?
を,背理法を使って証明してみましょう.
sin1°が有理数であると仮定する.3倍角の公式,
sin3θ=3sinθ−4sin^3θ
よりsin3°は有理数.次に,5倍角の公式,
sin5θ=16sin^5−20sin^3θ+5sinθ
よりsin15°は有理数.
これは,
sin15°=(√6−√2)/4は無理数
であることに矛盾する.
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阪本ひろむ氏よりのコメント.
[Q]tan1°は有理数か? 無理数か?
について,さらに考察を続けました.
なぜ,問題として,tanを使ったか?
[1]sinの加法定理はsin,cosの両方が出てきてしまう.よって,限られた時間内に解くので,受験生にとっては災難.
[2]tanの加法定理はtanのみで表現できる.試験問題は,その後,数学的帰納法と背理法を使って論理性を確かめることを主眼としている.とすれば,関数として,tanをして使ったのは適切だという気がする.
[3]問題を代数的数か?に書き換えてもいいのだが,いかんせん,高校では代数的数の事は教えていないはずだ.
(問題1)x^n + a_1 x^(n-1) + ... + a_n = 0
a_jが代数的数とするとき,全ての解は代数的数であるか?
たぶんOK.ざっと頭の中で考えた感じでは,証明できるようである.無論,既に解決済みの問題だと思われる.
(問題2)
x^n + a_1 x^(n-1) + ... + a_n = 0
a_jが代数的整数とするとき,全ての解は代数的整数であるか?
よく分からんが,解決積みの問題だと思う.
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