■書ききれなかった数の話(その28)
1728年にベルヌーイは
Σ1/n^2=1/1^2+1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・
この和が8/5に近いと述べ,その後,オイラーは何年もこの足し算にとりつかれ大変な努力の末にこの値を求めましたが,π^2/6であることをつきとめたとき,平方数の逆数和のかなたに円周率が浮かび上がる不思議にとても感動したようです.
オイラーがどうやって、
ζ(2)=1/1^2+1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・=π^2/6
を発見したかについてはさておき,
Σ1/n^2=1/1^2+1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・
が収束することは次のようにして示すことができます.
(証明)n次部分和をPn とすると、
Pn =1/1^2+1/2^2+1/3^2+・・・+1/n^2
<1+1/1・2+1/2・3+・・・+1/(n−1)・n=2−1/n
<2
より,単調増加数列{Pn }は有界でn→∞のとき収束することがわかります.
なお,級数Σ1/n(n+1)は,優雅な公式Σ1/n^2=π^2/6に表面的にはよく類似していますが、
Σ1/n(n+1)
=Σ(1/n−1/(n+1))
=(1−1/2)+(1/2−1/3)+(1/3−1/4)+・・・
=1
となり,両者の間には大きな格調の差があるという有名な例になっています.幾何学的に考慮すれば,級数Σ1/n(n+1)は縦、横それぞれ1/k,1/(k+1)の長方形を単位正方形の中に,Σ1/n^2は1辺の長さが1,1/2,1/3,1/4,・・・の正方形を1辺の長さがπ/√6の正方形の中に詰め込む問題になります.
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Σ1/n^2<2
を示すことができたが,よりよい評価を与えてみたい.
Σ1/n^2<Σ1/(n^2−1/4)
Σ1/(n^2−1/4)=Σ(2/(2n−1)−2/(2n+1))
n→∞のとき,Σ1/(n^2−1/4)→8/5
さらに
Σ1/n^2<1+Σ(2-)1/(n^2−1/4)
とおくと,n→∞のとき,Σ1/(n^2−1/4)→2/3
したがって,
Σ1/n^2<1+Σ(2-)1/(n^2−1/4)→5/3
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ζ(2)=1/1^2+1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・=π^2/6
の証明は非常に多く知られていますが,obe sentence proofまではいかないものかなり短いものがあるようです.
[参]佐久間一浩「高校数学と大学数学の接点」日本評論社
にある別証を掲げます.
オイラー積分
∫(0,π/2)log(cosx)dx=−π/2・log2
∫(0,π/2)log(sinx)dx=−π/2・log2
∫(0,π)xlog(sinx)dx=−π^2/2・log2
とポリログ関数
Lk(z)=Σz^n/n^k
L1(−1)=Σ(−1)^n/n=log2
L2(−1)=Σ(−1)^n/n^2=−1/2・log2
を用います.
f(x)=x^2/2+2xL1(e^x)−2L2(e^x)
を微分すると
f’(x)=x(1+e^x)/(1−e^x)=ixcot(x/2i)
∫xcotxdx=i/4・f(2ix)
∫(0,π/2)log(sinx)dx=i/4・(f(πi)−f(0))
ここで,
f(0)=−2L1(1)=−2ζ(2)
f(πi)=−π^2/2+2πiL1(−1)−2L2(−1)=−π^2/2+2πilog2+ζ(2)
より,
ζ(2)=π^2/6
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