■この門くぐるべからず(その15)
【1】n次元の球と立方体の投影面積比
次に,n次元単位超球に外接するn次元超立方体[-1,1]^n(体積2^n)を2次元平面上に直投影した際の面積比について考えてみましょう.
半径1の円に外接する1辺の長さが2の正方形を2次元に投影すると,楕円に外接する平行四辺形となります.したがって,投影方向に関わらず,その面積比はπ:4です.
また,半径1の球に外接する1辺の長さが2の立方体を平面に投影すると,楕円体に外接する平行六面体となりますが,面積比が最大となるのは,2次元同様,影の形が円に外接する正方形となるときで,その面積比は
π:4
です.
一方,面積比が最小となるのは1本の対角線が投影平面に垂直,もう1本の対角線が投影平面と平行になるときで,そのとき,立方体は対角線の長さが2√3の正6角形の形に投影され,この正6角形は半径√3の円に内接しますから,その面積は
3^2sin(π/3)=9/2
球はその等方性により投影面積はπですから,両者の比は
π:9/2
になります.
2次元・3次元での問題は,4次元の場合あるいは考察をもっと高次元化していくこともできます.n次元立方体を2次元平面に直投影すると,半径√nの円に内接する正2n角形となりますから,その最小投影面積比は
π:n^2sin(π/n)
で与えられます.
n→∞のとき,
sin(π/n)→π/n
ですから,投影面積比の最小値は
π:n^2sin(π/n)≒π:nπ=1:n
となることもわかります.
この上限と下限には大きな差があります.しかし,次元が高くなるにつれて,ある対角線が平面に垂直,別の対角線が平面と平行に投影される確率は大きくなりますから,投影面積比はπ:4よりも,
π:n^2sin(π/n) 〜 1:n
に近づくことが直観されるところです.積分に自信のある方は,厳密な平均値を求められてみては如何でしょうか.
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