■n次元の立方体と直角三角錐(その338)
2つの4次元ベクトル
a↑=(x1,y1,z1,w1)
b↑=(x2,y2,z2,w2)
が作る平行四辺形の面積Sについて考えてみると,
S^2=|a↑|^2|b↑|^2−(a↑・b↑)^2
=|y1 y2|^2+|z1 z2|^2+|x1 x2|^2
|z1 z2| |x1 x2| |y1 y2|
+|x1 x2|^2+|y1 y2|^2+|z1 z2|^2
|w1 w2| |w1 w2| |w1 w2|
これは6次元ベクトルの長さの形をしていることがわかります.
一般のn次元の空間では
a↑=(u1,・・・,un)
b↑=(v1,・・・,vn)
に対し,
S^2=|a↑|^2|b↑|^2−(a↑・b↑)^2
=Σ(ujvk−ukvj)^2
ただし,Σはj<kとなるnC2=n(n−1)/2組に対して和をとるものとします.
これは,n(n−1)/2次元ベクトルの長さの形をしているのですが,空間の次元が3のときだけ,運よく3次元ベクトルが得られていることがおわかり頂けたしょうか? この事実は,外積が3次元ベクトルでしか定義できないことを示しています.
ベクトルの外積は3次元特有のもので,2次元でも4次元でもだめなのですが,ほとんどの物理現象は3次元空間で生じますから,これでも汎用性は高いというわけです.
また,このことは,ベクトルの内積が一般のn次元空間でも
a↑・b↑=Σukvk
と表されるのと対照的です.
もっとも4次元以上では2つのベクトルa↑,b↑の張る平面に直交する方向は一義ではなくなるので,話がおかしくなってしまうのですが,そのため,高次元空間の理論がうまく定式化されるために「外積の拡張」を導入することが必要になります.
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【1】外積の拡張
3次元空間では,2つのベクトルの外積は
c↑=a↑×b↑=|e1↑ x1 y1|
|e2↑ x2 y2|
|e3↑ x3 y3|
で表されましたが,4次元では3つのベクトルa↑,b↑,c↑の張る超平面に直交する方向の向きと大きさをもつ量として,以下のように定義されます.
a↑×b↑×c↑=|e1↑ x1 y1 z1|
|e2↑ x2 y2 z2|
|e3↑ x3 y3 z3|
|e4↑ x4 y4 z4|
同様に,n次元ではn−1本のベクトルの張る超平面に直交する方向の向きと大きさをもつ量として定義されます.このようにすると,3次元空間でなくとも,一般の次元上でも展開されて成り立ちます.そこに至って初めて,これらの定義の有難味が理解されます.
石井源久先生の学位論文
「多次元半正多胞体のソリッドモデリングに関する研究」
でも,拡張された外積が使われています.また,2次元ベクトル(x1,y1)の外積はそれを90°回転させたベクトル(y1,−x1)ということになります.
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