■朝鮮サイコロ・中国サイコロの数理(その7)

 (その6)の最後では,準正多面体[3,4,4,4]で面心立方格子,体心立方格子の両方を作ることを考えてみました.体心立方格子を作る場合,面心立方格子よりもサイズが小さくなりますから,もし同じ枠内に納めたいならば,d=2(√2−1)として

  D{(d+1)/3+2}=d+4

より

  D=(21+9√2)/31=1.088

倍のサイズのものを用いる必要があることが算出されます.

 面心立方格子と体心立方格子を同じ枠内に納めることに加えて,さらに,同じ大きさの準正多面体[3,4,4,4]を用いるという条件を設定すると,D=1ですから

  (d+1)/3+2=d+4

でなければなりません.この解はd=2(立方体)となりますから,結局,同じ大きさの準正多面体[3,4,4,4]では同じ枠内に納まる面心立方格子と体心立方格子を作ることはできないことがわかります.

 しかし,このような多面体にはさまざまな可能性が考えられるわけで,同じ大きさの1種類の多面体で面心立方格子,体心立方格子の両方を作れるもの,しかも同じ枠内に納まるものについて考えてみました.

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【1】切稜立方体の切頂

 まず,そのような積み木を切稜立方体の切頂によって作る場合について考えます.切稜パラメータをdとおくと,六角形面の頂点の座標は

  (d/4+1/2,d/4+1/2,d/4+1/2)

と表され,中心からの距離は√3(d/4+1/2)と計算されます.

 すると,当該の問題は切頂パラメータをxとして,

  4x/√3+2=d+4

が0<x<√3(d/4+1/2)の範囲内に解をもつかどうかという問題に帰着されます.d/4+1/2は六角形面の頂点の座標です.

  4x/√3+2=d+4

を解くと

  x=√3(d/4+1/2)

となって,切稜立方体を体心立方格子状に積み上げると接合は六角形面の頂点同士の点接触となっていること,面接触ではないので切稜立方体の切頂では条件を満たすような多面体は不可能であることがわかりました.

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【2】切頂八面体の切稜

 次に,切頂八面体を切稜することによってこれらの条件を満たす多面体があるのかどうかを考えてみたのですが,この場合,

  4=d+4

に帰着され,解はd=0ですからこの場合も条件を満たす多面体は得られないことがわかりました.

 すべての場合について考察したわけではないので,同じ大きさの1種類の多面体で面心立方格子,体心立方格子の両方を作れるもの,同じ枠内に納まるものが存在しないと断定することはできませんが,もしこのような多面体が存在するとしたら,それは大変驚くべきことであり,衝撃的な多面体ではないかと思われました.

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